マンジャロによる治療を検討している、あるいは既に開始しているあなたにとって、副作用は避けて通れない大きな不安要素でしょう。
特に、「吐き気がいつまで続くのか」という身体的な辛さだけではなく、「うつっぽくなる」「性格が変わる」といった精神面への影響や、「ハゲる」「将来的に体に害が残る」といった未知のリスクについての噂を目にすると、治療を続けるべきか迷ってしまうのも無理はありません。
結論からお伝えすると、マンジャロの副作用(吐き気や胃の不快感など)は、投与後24〜48時間がピークとなり、多くの人が2〜4週間で体が適応して症状が落ち着きます。
しかし、インターネット上で囁かれる「うつ」や「脱毛」といった症状には、薬の直接的な作用だけでなく、「急激な栄養状態の変化」や「低血糖によるメンタルへの影響」が深く関わっています。
この記事では、精神科専門医である尾内隆志医師の監修のもと、マンジャロの副作用について、身体面と精神面の両方から徹底的に解説します。
- 吐き気や眠気の「具体的な発現時期」と「終わりの目安」
- 精神科専門医が解説する「マンジャロうつ」の正体と対処法
- 「ハゲる?」「将来危ない?」という噂の医学的根拠と予防策
不安を抱えたまま治療を続けるのではなく、正しい知識を持って、心も体も健康的に理想の自分を目指しましょう。
マンジャロの副作用はいつから?ピークと慣れるまでの期間

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)を開始した直後、多くの人が最初に直面するのが消化器系の副作用です。
「いつから気持ち悪くなるの?」「この辛さはいつまで続くの?」という疑問は、治療を継続する上で最も切実な悩みと言えるでしょう。
ここでは、副作用が現れる具体的なタイムラインと、体が薬に慣れるまでの期間について詳しく解説します。
【初期症状】吐き気・胃のむかつきは「翌日〜2日目」がピーク
マンジャロを注射した後、副作用が現れるタイミングには明確な傾向があります。
多くの患者さんが、注射を打った翌日から翌々日(投与後24時間〜48時間)にかけて、最も強い吐き気や胃の不快感を感じます。
これは、マンジャロの血中濃度(血液中の薬の濃度)が、投与後その時間帯に最大値(ピーク)に達するためです。
マンジャロは「GIP/GLP-1受容体作動薬」と呼ばれ、胃の動きを緩やかにする作用(胃内容排出遅延作用)を持っています。
この作用によって、食べたものが胃の中に長く留まることになり、少ない食事量でも満腹感が持続するのですが、体がこの変化に慣れていない初期段階では、これが「胃もたれ」や「吐き気」として強く認識されてしまうのです。
実際に治療を始めた方からは、次のような声が多く聞かれます。
「打った直後は何も感じなかったが、翌朝目覚めると二日酔いにも似た独特の胃のムカつきを感じた」というケースです。
例えば、朝食にいつもの半分程度のヨーグルトを食べただけで、すぐに胃がいっぱいになり、無理に食べると吐いてしまいそうになることもあります。
特に注意したいのが仕事中です。昼食後のデスクワーク中に強い眠気と吐き気の波が同時に押し寄せ、集中力を保つのが大変だったという報告も少なくありません。
水分をこまめに摂り、深呼吸をすることでなんとかやり過ごす方が多いですが、この「翌日がピーク」という傾向をあらかじめ知っておくだけでも、大事な会議を避けるなどスケジュールの調整がしやすくなるはずです。
具体的な症状としては、吐き気(悪心)、下痢、便秘、腹部の張り、げっぷ、胸焼けなどが挙げられます。
国内の臨床試験データ(日本人2型糖尿病患者を対象とした試験)では、悪心(吐き気)の発現率は5mg投与群で約10〜11%程度と報告されています。
また、用量が上がるほど頻度が増える傾向があり、高用量域では2割前後に達する報告もあります。
決して全員に出るわけではありませんが、吐き気はマンジャロで比較的よく見られる副作用の一つです。
重要なのは、これらの症状は「薬が効いている証拠」でもあるということです。
副作用が辛い時は、薬の効果で食欲が抑制されているサインだと捉え、無理に食べずに胃腸を休めることが大切です。
【持続期間】身体が慣れるまで「平均2週間〜1ヶ月」
では、その辛い副作用は一体いつまで続くのでしょうか。
結論から言うと、個人の体質差はありますが、平均して「2週間〜1ヶ月」程度で身体が慣れ、症状は軽減していきます。
マンジャロの一般的な治療の流れでは、通常、最小用量の2.5mgから開始し、4週間(1ヶ月)継続した後、副作用の状況を見ながら5mgへと増量していきます。
この「最初の1ヶ月」こそが、体が薬に適応するための助走期間なのです。
最初の1〜2回目(1週目〜2週目)の投与後は、先ほど述べたような強い副作用が出やすい傾向にあります。
しかし、3回目、4回目と回数を重ねるごとに、同じ量を打っても副作用の程度が軽くなっていくのを実感する人が大半です。
これは「タキフィラキシー(耐性)」の一種とも言えますが、受容体が持続的な刺激に順応することで、過剰な反応が起きにくくなるためと考えられています。
具体的には、以下のような経過をたどることが一般的です。
| 期間 | 症状の傾向 | 対策 |
|---|---|---|
| 1週目 | 投与翌日〜3日目に強い吐き気や倦怠感が出る可能性が高い。 | 週末など休みの前日に打つ。消化の良い食事を心がける。 |
| 2週目 | 1週目と同様か、やや軽くなる。食欲抑制効果はしっかり感じる。 | 水分補給を徹底する。便秘対策を始める。 |
| 3週目 | 副作用のピークが短くなり、日常生活への支障が減ってくる。 | 自分の適量(食事量)が掴めてくる時期。 |
| 4週目 | 投与直後でも強い不快感を感じにくくなる。「慣れ」を実感する。 | 5mgへの増量を医師と相談する準備期間。 |
もし、4週間経っても日常生活に支障が出るほどの副作用が続く場合は、無理に増量せず、2.5mgを維持するか、あるいは医師に相談して一時休薬や薬剤の変更を検討する必要があります。
「痩せるためには我慢が必要」と思い詰めず、自分の体の声に耳を傾けてください。
5mg、10mgへ増量した時の「副作用のぶり返し」について
体が2.5mgに慣れてきた頃、さらなる体重減少効果を求めて5mg、7.5mg、10mgへと用量を上げていく段階に入ります。
ここで注意が必要なのが、「増量のタイミングで副作用がぶり返すことがある」という点です。
薬の量が増えれば、当然ながら血中濃度も高くなり、受容体への刺激も強くなります。
そのため、2.5mgでは平気になっていた人でも、5mgに上げた最初の週は、再び初回のような吐き気や倦怠感に襲われることがあります。
2.5mgを4週間続け、副作用がほぼ消失したタイミングで5mgへ増量することが一般的ですが、ここで注意が必要です。
実際の患者さんからも、「もう慣れたから大丈夫だと安心していたが、5mgを打った翌日に、2.5mgの初回を超える強い倦怠感と胃の不快感に見舞われた」という報告が少なくありません。
まるで体が「また新しい薬が入ってきた」と驚いているかのように、反応が強く出ることがあるのです。
しかし、この「副作用のぶり返し」も、多くの場合2.5mgの時と同様に2〜3週間程度で落ち着いていきます。
増量時は「また最初からリスタートする」という心づもりで、翌日のスケジュールを空けておくなどの準備をしておくことを強くお勧めします。
増量時の副作用を最小限に抑えるためには、以下のポイントが重要です。
- 体調が万全な時に増量する: 風邪気味の時や生理中など、体調が優れない時の増量は避ける。
- 医師と密に相談する: 必ず医師の指示に従い、自己判断で急激に量を増やさない。
- 食事量を調整する: 増量直後は特に胃腸の動きが停滞するため、消化の良いものを少量ずつ食べる。
副作用は、あなたの体が薬に適応しようと頑張っているサインでもあります。
焦らず、段階を踏んで慣らしていくことが、長く治療を続けるための秘訣です。
【精神科医監修】「うつになる」「眠気がすごい」は本当?メンタルへの影響
マンジャロの副作用として、添付文書には記載が少ないものの、SNSや口コミで頻繁に語られるのが「精神面」への影響です。
「やる気が出ない」「ひどい眠気に襲われる」「イライラして情緒不安定になる」。
これらは単なる「気のせい」なのでしょうか?
実は、これには医学的な背景が存在する可能性があります。
このセクションでは、精神科専門医である尾内隆志医師の監修のもと、マンジャロとメンタルヘルスの関係について深掘りします。

ネットで囁かれる「マンジャロうつ」の正体
インターネット上では「マンジャロうつ」という言葉が飛び交うことがありますが、医学的にマンジャロという薬剤そのものが直接的にうつ病を引き起こすという明確なエビデンス(証拠)は、現時点では確立されていません。
海外の規制当局(FDAなど)でも、自殺念慮などのリスクについて調査が行われていますが、因果関係は結論づけられていません。
では、なぜ多くの人が気分の落ち込みを感じるのでしょうか。
尾内医師は、その要因について次のように解説します。
尾内医師 (精神科専門医) の解説
尾内 医師マンジャロを使用中に『うつっぽい』と感じるケースの多くは、薬剤による直接的な脳への作用というよりも、『急激な環境変化による身体的・心理的ストレス』が原因である可能性が高いと考えられます。
具体的には、以下の3つの要素が絡み合っています。
栄養不足によるエネルギー枯渇: 食事量が減ることで、脳のエネルギー源であるブドウ糖や、メンタルを安定させる神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)の材料となるタンパク質・ミネラルが不足し、意欲低下や倦怠感を招きます。
食べる喜びの喪失: 食べることは、多くの人にとって手軽なストレス解消法であり、喜びの源です。それが強制的に奪われることで、楽しみがなくなり、一時的な喪失感や抑うつ状態に陥ることがあります。
身体的不調の影響: 常に吐き気や便秘などの不快感を抱えている状態は、それだけで大きなストレスとなり、自律神経を乱してメンタルを不安定にします。
つまり、これは『うつ病』というよりも、『低栄養とストレスによる一時的な適応障害的な反応』に近い状態であると推測されます。
つまり、「薬のせいで脳がおかしくなった」と恐怖を感じる必要はありません。
多くの場合、身体が新しい食生活に慣れ、必要な栄養を効率的に摂れるようになれば、メンタルも自然と回復していきます。
異常な「眠気」と「イライラ」の原因は低血糖かも?
もう一つ、頻繁に報告されるのが「耐え難い眠気」や「些細なことでイライラする」という症状です。
これらもまた、精神的な問題だけでなく、「血糖値の変動」が大きく関わっている可能性があります。
マンジャロは血糖値を下げる薬です。
通常、血糖値が下がるとインスリンの分泌が抑えられ、低血糖にはなりにくいように設計されていますが、食事量が極端に減った状態や、糖質を完全にカットするような極端なダイエットを併用している場合、一時的に血糖値が下がりすぎてしまう「低血糖に近い状態」になるリスクがあります。
脳はブドウ糖を主なエネルギー源としているため、血糖値が下がると脳がエネルギー不足に陥ります。
その結果、脳を守るために活動を低下させようとして「強烈な眠気」が生じたり、危機的状況だと判断してアドレナリンを放出し、攻撃的になったり「イライラ」を引き起こしたりするのです。
尾内医師 (精神科専門医) のアドバイス



もし、日中に仕事が手につかないほどの眠気や、自分でも止められないイライラを感じた場合は、『機能性低血糖』の可能性を疑ってみてください。
特に、食事を抜いた後や、夕方ごろに症状が強くなる場合は要注意です。
対策としては、食事を完全に抜くのではなく、血糖値を緩やかに上げる食事を心がけることが大切です。
例えば、ラムネ(ブドウ糖)をひとかけら口にする、あるいはナッツやチーズなどのタンパク質を間食に摂ることで、血糖値の乱高下を防ぎ、メンタルを安定させることができます。
精神的な不調だと思って受診された患者さんが、実は単なるエネルギー不足だった、というケースは精神科の臨床現場でも決して珍しくありません。
精神的に不安定になりやすい人の特徴と注意点
マンジャロによるメンタルへの影響は、すべての人に一様に現れるわけではありません。
特に以下のような特徴を持つ人は、精神的な副作用(心理的な辛さ)を感じやすい傾向にあるため、注意が必要です。
ストレス発散の手段が「食べること」だった人は、その逃げ場を失うことになります。
食べることに代わる、新しいリラックス方法(入浴、アロマ、散歩、映画鑑賞など)を見つけておくことが、心の健康を守る防波堤となります。
「せっかく高い薬を使っているのだから、絶対に食べちゃダメだ」と自分を追い込んでしまう人は、少し食べてしまった時の罪悪感でメンタルを病みやすくなります。
「食べてもいい、薬が自然と量を調節してくれる」という、緩やかな気持ちで取り組むことが大切です。
低血糖の症状(動悸、冷や汗、不安感)は、パニック発作の症状と非常に似ており、それが引き金となって不安が増幅することがあります。
既往歴がある場合は、必ず主治医(精神科医)とダイエット治療を行う医師の両方に相談し、連携を取りながら慎重に進めるようにしてください。
「最近イライラしてるね」「元気ないね」と言われる前に、周囲の人に「今、ダイエット治療薬を使っていて、副作用で少し元気がなくなるかもしれない」と伝えておくことも有効です。
理解者がいるだけで、精神的な負担は大きく軽減されます。
「ハゲる」って噂は本当?マンジャロと脱毛・抜け毛の関係


「マンジャロを打つとハゲるらしい」
このような噂を耳にして、治療を躊躇している方もいるのではないでしょうか。
特に女性にとって、髪は命です。痩せても髪が薄くなってしまっては、元も子もありません。
この「脱毛」のリスクについて、医学的な観点から真実を解き明かします。
薬の成分ではなく「急激な体重減少」が主原因
まず安心していただきたいのは、マンジャロの薬効成分そのものに、毛根を攻撃したり脱毛を引き起こしたりする毒性があるわけではないという事実です。
抗がん剤のように、薬の作用で髪が抜けるのではありません。
では、なぜ抜け毛が増える人がいるのでしょうか。
その主な原因は、「休止期脱毛」と呼ばれる現象にあります。
これは、マンジャロに限らず、外科手術後の回復期や、極端な食事制限によるダイエットを行った際によく見られる症状です。
急激に体重が減少したり、栄養摂取量が大幅に減ったりすると、体は生命維持を最優先にするモードに切り替わります。
心臓や脳などの重要臓器に栄養を集中させるため、生命維持に直接関係のない「髪の毛」や「爪」への栄養供給が後回しにされてしまうのです。
その結果、成長期にある毛根が一斉に「休止期(成長が止まる時期)」へと移行してしまいます。
休止期に入った髪は、その後2〜3ヶ月経ってから自然に抜け落ちます。
つまり、ダイエットを始めて数ヶ月後に「最近、枕元の抜け毛が多いな」と感じるのは、数ヶ月前の急激な栄養不足の結果が現れているのです。
脱毛を防ぐために必須の栄養素「タンパク質・亜鉛」
休止期脱毛を最小限に抑えるためには、食欲が落ちている中でも、髪の材料となる栄養素だけは意識的に摂取する必要があります。
特に重要なのが以下の3つです。
- タンパク質:
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。
食欲がない時でも、プロテイン飲料を活用したり、豆腐や卵、サラダチキンなど、高タンパクで食べやすいものを選んで摂取しましょう。
1日あたり、体重1kgにつき1g〜1.2g(体重60kgなら60g〜72g)のタンパク質摂取が目安です。 - 亜鉛:
摂取したタンパク質を髪に変えるために不可欠なミネラルです。
牡蠣やレバー、ナッツ類に多く含まれますが、食事で摂るのが難しい場合はサプリメントを活用するのも有効です。 - 鉄分:
特に女性は鉄不足になりやすく、貧血は脱毛を加速させます。
赤身肉やほうれん草、鉄分添加のドリンクなどで補給しましょう。
治療開始から数ヶ月が経ち、体重が落ちてくると同時に「抜け毛が増えた」と不安を感じる方は少なくありません。
そんな時、無理に固形物を詰め込むのではなく、ドリンクで効率よく栄養を摂る方法が非常に有効です。
例えば、朝食代わりに「プロテイン+粉末の青汁+MCTオイル」を混ぜた特製シェイクを試してみてはいかがでしょうか。
これなら食欲がなくても飲みやすく、髪の材料となるタンパク質に加え、不足しがちなビタミンや良質な脂質を一気にチャージできます。
実際に、こうした栄養補給を意識的に取り入れたことで、肌トラブルや抜け毛の悩みが軽減したというケースも多く見られます。
「食べない」のではなく「賢く栄養を摂る」ことこそが、美しく健康的に痩せるための鉄則です。
万が一抜けても、体重が安定すれば髪は戻る
もし、現在進行形で抜け毛に悩んでいる方がいたとしても、過度に悲観する必要はありません。
休止期脱毛は、可逆的(元に戻る)な症状です。
体重の減少が緩やかになり、栄養状態が安定してくれば、休止していた毛根は再び「成長期」に入り、新しい髪が生えてきます。
永久にハゲてしまうわけではありません。
むしろ、ストレスを感じすぎてしまうと、それが新たな脱毛の原因(円形脱毛症など)になりかねません。
「今は体が省エネモードで、髪の生え変わりを休んでいるだけ」と捉え、焦らずに栄養補給を続けましょう。
もし、半年以上抜け毛が止まらない場合や、部分的にごっそり抜ける(円形脱毛)場合は、ダイエットとは別の原因(甲状腺疾患など)も考えられるため、皮膚科や内科を受診することをお勧めします。
将来が怖い人へ。重大な副作用と長期リスクの真実
「将来、癌になるリスクがあるって本当?」
「妊娠に影響はないの?」
これから先の人生を考えた時、長期的なリスクについては誰しも慎重になるものです。
ここでは、頻度は稀ながら知っておくべき重大な副作用と、将来的な安全性に関する最新の医学的見解を解説します。
頻度は稀だが知っておくべき「急性膵炎」と「低血糖」
マンジャロの添付文書において、「重大な副作用」として警告されているものの中に、急性膵炎と低血糖があります。
これらは発現頻度は非常に低いですが、万が一発症した場合は直ちに適切な処置が必要です。
GLP-1受容体作動薬は膵臓に作用するため、稀に膵臓に炎症を起こすことがあります。
【初期症状】 激しい腹痛(背中まで突き抜けるような痛み)、嘔吐、発熱。
もし、ただの腹痛とは違う激痛を感じた場合は、すぐに薬の使用を中止し、救急外来を受診してください。
先ほども触れましたが、特に他の糖尿病薬(スルホニルウレア剤など)と併用している場合や、過度な食事制限、激しい運動を行った後にリスクが高まります。
マンジャロ単独では重篤な低血糖は起こりにくい一方、条件が重なると低血糖に近い状態が起こり得るため注意が必要です。
【初期症状】 冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、脱力感。
これらの症状を感じたら、すぐにブドウ糖(10g程度)や糖分を含む清涼飲料水を摂取してください。
甲状腺がんのリスクは「動物実験レベル」の話?
「甲状腺がんになる」という噂の元ネタは、主に動物実験(ラット・マウス)のデータに由来します。
ラットを用いた実験において、GLP-1受容体作動薬の投与により「甲状腺C細胞腫瘍」の発生頻度が増加したという報告があります。
しかし、これはあくまでげっ歯類(ネズミ)特有の反応である可能性が高く、現時点において、ヒトでの臨床試験や疫学調査で、甲状腺がんのリスクを明確に増加させるという結論は出ていません。
加えて、大規模臨床試験の範囲では、少なくとも「甲状腺がん発症が有意に増える」といった所見は確認されていません。
ただし、安全を期すために、以下のいずれかに該当する方はマンジャロの使用は禁忌(禁止)、または慎重投与とされています。
- 本人または家族に「甲状腺髄様がん」の既往がある方
- 「多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)」の患者さん
一般的な甲状腺機能低下症(橋本病)や亢進症(バセドウ病)とは異なる特定の希少がんですので、不安な場合は医師に家系内の病歴を伝え、確認してもらうと良いでしょう。
妊娠・出産(不妊)への影響は?将来の安全性
将来的に妊娠を希望している女性にとって、薬剤の影響は最も気になるところです。
まず大前提として、妊娠中、および授乳中のマンジャロの使用は「禁忌(禁止)」です。
動物実験において、胎児の成長阻害や奇形のリスクが報告されているためです。
では、妊活を始めるどれくらい前にやめれば良いのでしょうか。
マンジャロ(チルゼパチド)の半減期(体から薬が半分抜ける期間)は約5日です。
薬が体から完全に抜けるには、半減期の約5倍の期間が必要と言われています。つまり、約25日〜1ヶ月程度です。
ただし安全マージンを十分にとる観点から、処方情報や臨床現場の運用として「妊活開始の少なくとも2ヶ月前(月経2サイクル前)を目安に中止する」旨の案内がなされることがあります。
実際の休薬期間は個別事情で変わるため、必ず主治医の指示に従って計画してください。
また、マンジャロには経口避妊薬(ピル)の吸収を低下させる可能性があるため、ピルを服用している方は避妊効果が弱まるリスクがあることにも注意が必要です。
逆に言えば、適切な期間を空けて薬を抜けば、その後の妊娠能力や胎児に悪影響が残るというデータはありません。
むしろ、肥満そのものが不妊のリスク因子(多嚢胞性卵巣症候群など)であるため、まずはマンジャロで適正体重まで減量し、健康な体になってから妊活に臨むという選択は、医学的にも理にかなっていると言えます。
辛い副作用を乗り切るための具体的対処法5選
ここまで副作用のリスクについて解説してきましたが、実際に症状が出た時、どう対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、明日からすぐに実践できる、具体的かつ効果的な5つの対処法をご紹介します。
これを実践するかしないかで、治療の快適度は大きく変わります。
【吐き気対策】分食と水分摂取のゴールデンルール
副作用のピーク時、吐き気が辛くて食事が喉を通らない時は、無理に「1日3食」のリズムを守る必要はありません。
胃の動きが遅くなっているため、一度に大量の食べ物が入ってくると、胃が処理しきれずにオーバーフローしてしまいます。
おすすめは「分食(ぶんしょく)」です。
1日の食事量を5回〜6回に分け、1回の量を「握り拳ひとつ分」程度に抑えます。
これなら胃への負担を最小限に抑えつつ、血糖値の乱高下も防ぐことができます。
また、吐き気がある時は水分摂取も億劫になりがちですが、脱水は吐き気を悪化させます。
一度にゴクゴク飲むのではなく、「経口補水液や常温の水を、15分おきにひと口ずつ飲む」という点滴飲みを心がけてください。
【便秘対策】マグネシウム剤と食物繊維のバランス
マンジャロを使用すると、腸の動きも低下するため、便秘になりやすくなります。
「3日出なければ対策」をルールにしましょう。
水分を摂ることは基本ですが、それだけでは解消しない場合、「酸化マグネシウム」などの非刺激性下剤の併用が非常に有効です。
これは便に水分を含ませて柔らかくする薬で、習慣性が少なく、多くのクリニックで処方可能です(市販薬でも購入可能です)。
一方で、食物繊維には注意が必要です。
野菜などの不溶性食物繊維を摂りすぎると、胃腸の動きが悪い状態では逆に詰まりの原因になることがあります。
便秘がひどい時は、不溶性食物繊維(根菜類など)は控えめにし、水溶性食物繊維(海藻、オクラ、熟した果物など)や整腸剤を中心に摂るのがコツです。
【精神ケア】「食べられないストレス」の逃がし方
最後に、メンタル面のケアです。
「食べたいのに食べられない」「美味しいと感じない」というストレスは、ボディブローのように心に効いてきます。
このストレスを放置すると、反動でのドカ食い(リバウンド)や、治療の中断に繋がります。
尾内医師は、脳の報酬系(ドーパミンが出る仕組み)を別のものに置き換えることを推奨しています。
尾内医師 (精神科専門医) のアドバイス



これまで『食べること』で得ていたドーパミンを、別の行動で補う工夫をしましょう。
激しい運動である必要はありません。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かる(副交感神経を優位にする)
好きな香りのアロマを焚く
マッサージや整体に行く(身体的接触による安心感)
部屋の片付けをする(達成感を得る)
こうした『自分をいたわる行動』を意識的に行うことで、脳は食事以外の満足感を学習していきます。
また、『辛いのは今だけ、この期間を乗り越えれば理想の自分が待っている』というポジティブな未来を具体的にイメージすることも、精神的な持久力を高めるのに役立ちます。


マンジャロに関するよくある質問 (FAQ)
最後に、診察室でよく聞かれる質問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。
副作用が辛くてやめたい。急にやめても大丈夫?
尾内医師 (精神科専門医) の回答
「マンジャロは習慣性のある薬ではなく、身体的な依存性や離脱症状(いわゆる禁断症状)は基本的に想定されないため、急にやめてもそれ自体が直ちに医学的危険になるわけではありません。
しかし、食欲抑制効果が急になくなるため、強烈な食欲のリバウンド(反動)が起きるリスクが高いです。
やめる場合も、自己判断でスパッとやめるのではなく、投与間隔を1週間から10日、2週間へと徐々に延ばしたり、用量を下げたりしながら、体を『薬のない状態』にソフトランディングさせる方法(漸減法)を推奨します。必ず医師に相談してください。」
マンジャロを使えない人(禁忌)は?
以下の方は使用できません。
- 1型糖尿病の方
- 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の方
- 重度の胃腸障害のある方
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある方
- 妊婦、または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性
- 本人または家族に甲状腺髄様がんの既往がある方/多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の方
※重度の腎機能障害、肝機能障害のある方は「禁忌」ではなく、原則として慎重投与(医師がリスクを評価して判断)となります。
個人輸入のマンジャロは危険?
極めて危険ですので、絶対にお勧めしません。
現在、GLP-1受容体作動薬の世界的な需要増に伴い、海外からの個人輸入ルートで「偽造品」や、有効成分が含まれていない粗悪品、あるいは不衛生な環境で製造された細菌混入品が出回っている事例が報告されています。
また、個人輸入した医薬品で重大な健康被害(副作用)が出た場合、国の公的な救済制度である「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となり、治療費はすべて自己負担となります。
必ず国内の医療機関で、医師の診察を受けた上で処方された正規品を使用してください。
まとめ:副作用は「効いている証拠」でもあるが、我慢は禁物
マンジャロは、高い減量効果が期待できる画期的な薬ですが、その反面、心と体に様々な変化をもたらします。
この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- [ ] 吐き気のピークは投与翌日〜2日目。 多くの人は2週間〜1ヶ月で慣れる。
- [ ] 「うつっぽさ」は栄養不足や低血糖が原因の可能性大。 糖質やタンパク質を賢く補給する。
- [ ] 「抜け毛」は急激な体重減少による一時的なもの。 戻るので過度な心配は不要。
- [ ] 将来のリスク(癌や不妊)については、過剰に恐れる必要はないが、妊活中は休薬が必要。
- [ ] 辛い時は我慢せず、分食や整腸剤、水分補給で対策する。
副作用は、あなたの体が変化しようとしている証拠でもあります。
しかし、日常生活が破綻するほどの辛さや、精神的な不調を「痩せるためだから」と一人で抱え込んで我慢するのは間違いです。
特に、メンタル面の不安や、将来へのリスクについては、体重の数字しか見ないクリニックではなく、あなたの「心」と「体」の両方を診てくれる、信頼できる医師のサポートが不可欠です。
もし、今の副作用が不安でたまらない、あるいはこれから始めるにあたって専門医の話を聞いてみたいと思われたら、一度専門機関のカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。
正しい知識と専門家の伴走があれば、副作用の波は必ず乗り越えられます。
あなたが、心身ともに健康で、自信に満ちた自分に出会えることを心から応援しています。
参考文献

