眼科医がメガネをかけている3つの合理的理由!レーシックは危険という誤解と「職能上の適正」を徹底解説
眼科医がメガネをかけている3つの合理的理由!レーシックは危険という誤解と「職能上の適正」を徹底解説

眼科医がメガネをかけている3つの合理的理由!レーシックは危険という誤解と「職能上の適正」を徹底解説

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この記事の監修者
尾内 隆志 (おない たかし) Takashi Onai, M.D.
  • 資格:公益社団法人 日本精神神経学会 精神科専門医
  • 所属・役職:医療法人社団青雲会 北野台病院 理事長
  • 専門分野:臨床精神科医学一般、EDに伴う心理的側面
  • 医籍登録:医師免許取得:平成12年5月(医籍登録番号:409881)
学歴・職歴(要点を表示)
【学歴】
郁文館高等学校(平成3年4月〜平成6年3月)
聖マリアンナ医科大学 医学部医学科(平成6年4月〜平成12年3月)

【職歴】
東京大学医学部附属病院 精神神経科(平成12年4月〜平成13年5月)
針生ヶ丘病院 精神科(平成13年6月〜平成15年5月)
初石病院 精神科(平成15年6月〜平成17年5月)
手賀沼病院 精神科(平成17年6月〜平成18年12月)

理事長/院長よりご挨拶:
昭和32年の開院以来、地域の皆様に支えられ半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。社会や生活スタイルの変化に伴い精神医療も大きく変化しています。私たちは優しく開かれた医療をめざし、地域に根ざした活動を推進し、患者様・ご家族に安心いただけるホスピタルづくりに尽力してまいります。

眼科医が分厚いメガネをかけている姿を見て、「目の専門家が手術を受けないのは、やっぱり危険だからではないか?」と不安に思ったことはありませんか?

その直感は、ある意味で鋭い観察眼と言えますが、実は大きな誤解を含んでいます。

結論から申し上げますと、多くの眼科医がメガネをかけ続けるのには、医学的な危険性とは全く別の「職業的な合理性」が存在するからです。

この記事では、医療現場の取材を続ける医療ライターが、眼科医があえて「近視」のまま過ごす驚きの理由と、それがあなた(特にデスクワーカーの方)に当てはまるのかどうかを徹底解説します。

医療法人社団青雲会 北野台病院 理事長であり、精神科専門医の尾内隆志先生監修のもと、医師の本音とデータに基づいた真実をお届けします。

この記事を読めば、以下の3つの真実が明らかになります。

  • 眼科医があえて「近視」のまま過ごす、一般人とは異なる特殊な職業事情
  • 「実はレーシックを受けている医師」の意外な割合と、隠された統計データ
  • デスクワーカーの方が手術を受けるべきか判断するための「適正チェック」

「医者はやらない=危険」という不確かな噂に振り回されることなく、事実に基づいた冷静な視点で、あなたにとっての「正解」を見つけるヒントにしてください。


目次

なぜ眼科医はレーシックをしないのか?そこには「3つの明確な理由」がある

まず、この記事の核心となるテーマから深掘りしていきましょう。

多くの患者さんが抱く「眼科医はレーシックの手術が危険だと知っているから、自分では受けないのだ」という疑念についてです。

確かに、リスクがゼロの手術などこの世には存在しません。

しかし、眼科医がメガネを手放さない最大の理由は、リスクへの恐怖ではなく、もっと実利的な「仕事上のパフォーマンス維持」にあることが多いのです。

ここでは、一般の方にはあまり知られていない、医師という職業特有の3つの事情について詳しく解説します。

尾内医師の解説

尾内 医師

医師が自身の体にメスを入れることを躊躇する場合、それは単なる恐怖心だけではありません。
医師にとって身体機能、特に『視力』は、診療パフォーマンスを支える最も重要なツールの一つです。
現在の状態で仕事が最適化されている場合、あえてそのバランスを変えることへのリスク管理の側面が強く働きます。
これは『危険だから避ける』というよりも、『現状がプロとして最適だから維持する』という職人気質な判断と言えるでしょう。

理由1:マイクロサージャリー(顕微鏡手術)への職業的適正

正視と軽い近視の目の断面図比較。手元の精密作業において、正視は目の負担が大きく疲労しやすいのに対し、軽い近視は負担が小さく天然の拡大鏡のように見える様子を図解。

眼科医の仕事、特に手術は「マイクロサージャリー」と呼ばれる極めて微細な世界で行われます。

角膜や網膜といった組織は、厚さがわずか0.5ミリメートル程度しかありません。

その薄い膜を縫合したり、濁りを取り除いたりする作業には、顕微鏡越しの超精密な操作が要求されます。

ここで重要になるのが、「近視」という状態が持つ意外なメリットです。

一般的に近視は「目が悪い」とネガティブに捉えられがちですが、眼科医にとっては「近くのものが詳細に見える」という強力な武器になり得ます。

正視(遠くがよく見える目)の人が顕微鏡や手元の細かい作業を長時間行う場合、常に目のピント調節機能を酷使することになります。

一方で、軽度の近視がある医師は、調節力を使わずに、あるいはメガネを外すだけで、リラックスした状態で手元の微細な構造を鮮明に見ることができます。

つまり、眼科医にとっての近視は、一種の「天然の拡大鏡」のような役割を果たしているのです。

このアドバンテージを捨ててまで、遠くの看板や景色が見えるようになることの優先順位は、彼らにとって必ずしも高くありません。

これが、精密作業を専門とする眼科医がレーシックを受けない、一つ目の、そして最大の合理的理由です。

理由2:ベテラン医師の「老眼」問題と回避行動

次に無視できないのが、加齢に伴う「老眼」の問題です。

医師として脂が乗り、手術の執刀数も増えてくる40代以降は、誰しも老眼の影響を受け始めます。

老眼とは、目のピント調節力が衰え、近くのものが見えにくくなる生理現象です。

もし、近視の眼科医がレーシック手術を受けて、視力を「遠くが見える状態(正視)」に矯正していたとしましょう。

すると、40代半ばに差し掛かった途端、手元のカルテ、論文、そして何より患者さんの目の患部が見えにくくなってしまいます。

その結果、手術中や診察中に老眼鏡をかけたり外したりという煩わしい動作が必要になります。

しかし、近視のままであればどうでしょうか。

近視の人は、近視用メガネを外すだけで、老眼の年齢になっても手元をハッキリと見ることができます。

これを「近視のメリット」と呼びます。

多くのベテラン眼科医は、将来訪れるこの老眼のメリットを享受するために、あえて若い頃にレーシックを受けず、近視の状態を温存するという戦略的な選択をしているのです。

生涯にわたって大量の論文を読み、細かい患部を診察し続ける医師という職業において、この選択は非常に理にかなっています。

理由3:不可逆性への慎重な姿勢(医学的バイアス)

3つ目の理由は、医師という職業が持つ特有の心理的バイアスです。

眼科医は日々、目の病気やトラブルを抱えた患者さんを診察しています。

その中には、ごく稀ではありますが、他院で受けた屈折矯正手術の合併症で悩む患者さんも含まれています。

レーシック手術の成功率は非常に高く、統計的には99%以上の患者さんが満足しているというデータがあります。

しかし、医師は職業柄、その成功した99%の人たちよりも、トラブルが起きた1%未満の事例に接する機会が圧倒的に多いのです。

これを心理学的に「利用可能性ヒューリスティック」と呼ぶこともありますが、要するに「失敗例を見過ぎている」ために、一般の人よりもリスクを過大に見積もってしまう傾向があります。

また、レーシックは角膜を削る手術であり、一度削った角膜は元に戻すことができません(不可逆性)。

「健康な目にメスを入れる」ということに対する倫理的な抵抗感や、万が一にも自分の視覚にトラブルが起きたら医師としてのキャリアが終わってしまうという職業的な重圧。

これらが相まって、データ上の安全性は理解していても、自分の目には慎重にならざるを得ないという医師も少なくありません。

つまり、「危険だからやらない」のではなく、「プロとしてリスクを極限までゼロに近づけたい」という慎重な姿勢の表れなのです。


データで見る真実:実は多くの眼科医が屈折矯正手術を受けている

ここまで「医者がやらない理由」を解説してきましたが、ここで驚くべき事実をお伝えしなければなりません。

実は、「眼科医はレーシックを受けない」というのは、ある種の都市伝説に過ぎないというデータが存在するのです。

実際に統計をとってみると、眼科医のレーシック経験率は、一般の人々よりもむしろ高いという結果が出ています。

ここでは、感情論ではなく客観的な数字に基づいて、医師たちの本当の動向を見ていきましょう。

米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)の衝撃的なデータ

眼科医と一般人のレーシック経験率を比較した棒グラフ(イメージ)。眼科専門医の経験率は一般人口の約2〜4倍との報告があることを示している。出典はASCRS関連データ等。

世界的な権威を持つ米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)が行った調査があります。

この調査によると、屈折矯正手術を行っている眼科医自身のレーシック(およびPRKなど)の経験率は、一般人口の平均よりも高かったと報告されています。

さらに興味深いのは、「自分の家族や友人にレーシックを勧めるか?」という質問に対する回答です。

なんと90%以上の眼科医が「勧める」と回答しています。

もし、眼科医が本当にレーシックを「危険なもの」「欠陥がある手術」だと考えているなら、大切な家族や友人に勧めるはずがありません。

このデータは、眼科医が手術の安全性を医学的に信頼していることの何よりの証明です。

▼ ログを見る:一般人口と眼科医の意識調査データ比較

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調査項目一般人口眼科医 (屈折矯正担当)
レーシック経験率低い (数%程度)高い (一般の約2〜4倍との報告あり)
家族への推奨率90%以上
満足度95.4% (世界平均)極めて高い

出典: ASCRS (American Society of Cataract and Refractive Surgery) 関連データより筆者整理

日本国内においても、学会などで会う医師たちを見渡すと、実は手術を受けている先生は少なくありません。

ただ、手術を受けて裸眼になった医師は、当然ながらメガネをかけていません。

患者さんからは「目が良い先生」にしか見えないため、「レーシックを受けた」という事実に気づかれないだけなのです。

一方で、メガネをかけている医師は目立つため、「やっぱり医者はメガネだ」という印象が強化されてしまうのです。

これを「生存者バイアス」の一種と捉えることもできるでしょう。

日本の若手眼科医におけるトレンドの変化

さらに、最近では日本の若手眼科医の間で、明らかな意識の変化が見られます。

かつては「角膜を削る」ことに抵抗を持つ医師も多かったのですが、技術の進歩により、そのハードルは下がりつつあります。

特に、手術用顕微鏡のデジタル化が進んだことが影響しています。

従来の顕微鏡は接眼レンズを直接覗き込むスタイルでしたが、最新の手術室では、高精細なモニター画面を見ながら手術を行う「ヘッズアップサージャリー」が普及し始めています。

モニターを見るのであれば、極度の近視である必要性は薄れます。

また、角膜を削らない「ICL(眼内コンタクトレンズ)」の登場も、医師たちの選択を変えました。

「削らないなら、万が一の時はレンズを取り出せばいい」という可逆性が担保されたことで、自らICL手術を受ける眼科医が急増しています。

実際に、自身のクリニックのホームページやSNSで、院長自らがICL手術を受けた体験談を公開しているケースも増えてきました。

「医者はやらない」というのは、もはや過去の話になりつつあるのです。


【職種別判定】あなたはレーシックを受けるべきか?

さて、ここからが本題です。

眼科医の事情は分かりましたが、重要なのは「あなた自身が手術を受けるべきかどうか」です。

この記事を読んでいるあなたは、エンジニアや事務職など、日々の業務で長時間パソコンのモニターを見つめ続けている方が多いのではないでしょうか。

眼科医とあなたでは、目の使い方も、仕事で求められる視力の質も全く異なります。

医師がやらないからあなたもやめるべきか、あるいは、医師とは違う理由であなたは受けるべきか。

その判断基準を、デスクワーカーという職種の特性に合わせて詳細に分析します。

尾内医師のアドバイス

尾内 医師

医療判断において最も重要なのは、『誰にとっても100点の手術』を探すことではなく、『あなたの生活スタイルにとってメリットがリスクを上回るか』を見極める個別性です。
外科医の手元の見え方と、デスクワーカーの方がモニターを見る目の使い方は、全く異なります。
ご自身の『快適な距離』がどこにあるのかを理解することが、後悔しない選択の第一歩です。

「手元重視」の医師 vs 「中間距離重視」のデスクワーカー

職種別に最適な焦点距離を示したイラストマップ。医師は20〜30cmの超近距離、SE/デスクワーカーは50〜70cmの中間距離、プロドライバーは5m以遠の遠距離を見る様子が描かれている。

眼科医の手術や処置は、目から20cm〜30cmという極めて近い距離で行われます。

この距離でピントを合わせ続けるには、強い調節力が必要であり、前述の通り「近視」が圧倒的に有利です。

しかし、デスクワークの仕事環境はどうでしょうか。

あなたが一日中見つめているモニターは、目からおよそ50cm〜70cmの距離にあるはずです。

さらに、会議室のホワイトボードやプロジェクターを見る時は数メートルの距離、手元のキーボードやスマホを見る時は30cmの距離と、視線の移動は医師よりも多岐にわたります。

この「50cm〜70cm」という中間距離は、強度の近視のまま裸眼で見ようとすると、顔を画面に近づけなければならず、姿勢が悪くなり肩こりの原因になります。

かといって、強すぎるメガネをかけていると、今度は目が疲れやすくなります。

レーシックやICLで視力を矯正する場合、目標とする視力をコントロールすることができます。

もしあなたがデスクワーカーなら、両目をガッツリ2.0に合わせる必要はありません。

例えば、少し控えめの1.0〜1.2程度、あるいは片目を遠く用、もう片目を近く用に合わせる「モノビジョン」という方法など、デスクワークに最適化された度数設定が可能です。

医師には医師の、そしてデスクワーク中心のあなたにはあなたの「最適な視力」があるのです。 

医師が選ばないからといって、それがあなたの仕事や生活にとっても不適当だという理由にはなりません。

▼ 職種別:最適な焦点距離マップ

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職種主な作業距離視力へのニーズ手術の推奨度
眼科医・外科医20〜30cm (超近距離)裸眼で拡大視したい低〜中 (老眼対策優先)
SE・デスクワーカー50〜70cm (中間距離)モニターを姿勢良く見たい中〜高 (度数調整が鍵)
プロドライバー5m以遠 (遠距離)標識・信号の早期発見高 (遠方視力重視)

ドライアイリスクとデスクワークの相性

デスクワーカーの方が手術を検討する際、最も懸念すべきなのは「ドライアイ」です。

長時間モニターを見続ける作業は、瞬きの回数を減らし、ただでさえドライアイを悪化させる要因になります。

レーシック手術は、角膜の表面にフラップ(蓋)を作る過程で、角膜の知覚神経を切断します。

これにより、一時的に「目が乾いている」という感覚が脳に伝わりにくくなり、涙の分泌量が減ってドライアイが悪化するリスクがあります。

通常は数ヶ月から半年程度で神経が再生し、症状は改善しますが、元々ドライアイが酷いデスクワーカーの方にとっては、この期間が仕事のパフォーマンス低下に直結する恐れがあります。

ここで選択肢として浮上するのが、後ほど詳しく解説する「ICL」です。

ICLは角膜を削らず、切開創もごくわずか(約3mm)であるため、角膜の知覚神経へのダメージが最小限に抑えられます。

そのため、レーシックに比べて術後のドライアイのリスクが大幅に低いとされています。

もしあなたがコンタクトレンズによるドライアイや充血に悩んで手術を検討しているなら、レーシックよりもICLの方が、デスクワーカーとしての適性は高いと言えるでしょう。

30代がラストチャンス?老眼までの「損益分岐点」を考える

次に考えるべきは「年齢」と「タイミング」です。

一般的に、老眼の自覚症状が出始めるのは45歳前後と言われています。

もしあなたが現在30代前半から半ばであれば、今手術を受けることで、老眼が始まって手元が見えにくくなるまでの約10年〜15年間は、メガネやコンタクトなしで遠くも近くも快適に見える「ゴールデンタイム」を享受できます。

この「老眼までの裸眼期間」に、数十万円の費用とリスクを投資する価値があるかどうかが、判断の分かれ目です。

コンタクトレンズの維持費(ケア用品含む)と比較してみましょう。

1dayコンタクトを両目で月5,000円使用すると仮定すると、年間6万円。

10年間使い続ければ、総額は60万円になります。

手術費用と比較しても、向こう10年というスパンで見れば、経済的な損益分岐点は十分にクリアできる計算になります。

また、30代のうちに手術を受けておけば、子育てや趣味のスポーツ、旅行など、人生で最もアクティブな時期を裸眼で過ごせるという「QOL(生活の質)」の向上は、単純な金銭計算には代えがたい価値があります。

逆に、これが40代後半になってからの検討であれば、手術をして遠くが見えるようになっても、すぐに老眼が始まって手元が見えにくくなるため、手術の恩恵は薄れてしまいます。

「30代」という時期は、費用対効果と人生の質を最大化できる、まさに「ラストチャンス」に近いタイミングと言えるかもしれません。


医師が本当に心配しているリスクと、知っておくべき「許容範囲」

手術にはメリットだけでなく、必ずリスクが伴います。

医師が慎重になる背景には、一般の方がイメージする「失明」のような極端なリスクではなく、もっと現実的で、生活の質に関わるリスクへの懸念があります。

ここでは、カウンセリングの良い面だけでなく、医師が内心で懸念しているリアルなリスクについて包み隠さず解説します。

尾内医師の注意喚起

尾内 医師

どんなに優れた医療行為にも、100%の安全は存在しません。
重要なのは、そのリスクが『想定内』であり、万が一の際にご自身の生活や仕事において許容できる範囲かどうかを確認しておくことです。
良いことばかりを強調する情報ではなく、ネガティブな情報も含めて公平に判断材料を提供してくれる医師を選んでください。

ハロー・グレア現象と夜間視力の質

レーシックやICLの手術後に多くの人が経験するのが、「ハロー・グレア」と呼ばれる現象です。

これは、夜間に信号や車のライトを見たときに、光の周りに輪がかかって見えたり(ハロー)、光がギラギラと眩しく散乱して見えたり(グレア)する症状です。

瞳孔が大きく開く暗い場所で、矯正した部分とそうでない部分の境界で光が乱反射することで起こります。

時間の経過とともに脳が順応し、気にならなくなることがほとんどですが、完全に消えるわけではありません。

もしあなたが、夜遅くまで残業して暗いオフィスでモニターを見ることが多かったり、夜間のドライブが趣味だったりする場合は、この現象がストレスになる可能性があります。

医師はこの「見え方の質(Quality of Vision)」の変化を懸念します。

視力検査で「1.5」が出ても、景色が滲んで見えていては、患者さんの満足度は低いからです。

「過矯正」による眼精疲労の罠

多くの患者さんは「せっかく手術するなら、一番よく見えるようにしてください。2.0見えるようにしてください」と要望します。

しかし、良心的な医師ほど、この要望には慎重になります。

なぜなら、必要以上に視力を良くしすぎる「過矯正」は、眼精疲労、頭痛、肩こり、吐き気、さらには自律神経失調症の原因になるからです。

特にデスクワーク中心の方にとって、遠くが2.0見える目は、近くを見る際に強烈な負荷がかかる「疲れやすい目」でしかありません。

医師が自分自身の手術で「あえて1.0程度」に抑えるのは、この過矯正による体調不良のリスクを熟知しているからです。

「視力が高い=良い目」とは限りません。

「自分の生活に合った視力=良い目」なのです。

長期的な安全性:数十年後の白内障手術への影響

眼科医がレーシックを躊躇した歴史的背景の一つに、将来の白内障手術への影響があります。

レーシックで角膜を削ると、角膜の形状が変化します。

これにより、数十年後に白内障の手術が必要になった際、眼内レンズの度数計算に誤差が生じやすくなるという問題がありました。

「若いうちは良くても、おじいちゃんになった時に困るのではないか?」という懸念です。

現在では、レーシック後の目に対応した計算式や測定機器が進化しており、この問題はほぼ解決されつつあります。

しかし、それでも「一度手を加えた目」であることに変わりはなく、通常よりも慎重な検査や高度な技術が必要になることは事実です。

医師は自分の人生を長いスパンで見ています。

「今」の利便性だけでなく、30年後、40年後の目の健康管理まで見据えた時、あえて手を加えないという選択肢もまた、一つの正解なのです。


それでも迷う人へ:不可逆性が怖いなら「ICL」という選択肢

ここまで読んで、「理屈は分かったけれど、やっぱり角膜を削るのは怖い」と感じた方もいるでしょう。

一度削ったら元に戻せない「不可逆性」こそが、レーシック最大の心理的ハードルです。

そんな慎重派のあなたに、そして実は多くの眼科医自身も選んでいる代替案として、「ICL(眼内コンタクトレンズ)」をご紹介します。

眼科医がICL(眼内コンタクトレンズ)に注目する理由

ICLは、角膜を削るのではなく、目の中に小さなレンズを挿入して視力を矯正する手術です。

この手術の最大の特徴であり、医師たちが支持する理由は「可逆性(元に戻せること)」にあります。

もし将来、何らかのトラブルが起きたり、白内障の手術が必要になったり、あるいは度数が大きく変わったりした場合、挿入したレンズを取り出せば、目は手術前の状態に戻ります。

「気に入らなければ元に戻せる」

この安心感は、リスク管理に敏感な医師にとって非常に大きな魅力です。

また、角膜を削らないため、視界のコントラスト感度(くっきり見える度合い)が低下しにくく、レーシックよりも「見え方の質」が高いという特徴もあります。

レーシック vs ICL メリット・デメリット比較

レーシックとICLの手術構造比較図。レーシックは角膜を削るため元に戻せない(不可逆)が、ICLはレンズを挿入するだけなので取り出せば元に戻せる(可逆性あり)ことを示している。

ICLは非常に優れた手術ですが、レーシックに比べて費用が高額になるというデメリットがあります。

それぞれの特徴を整理して、あなたに合う方法を比較してみましょう。

▼ 詳しく見る:レーシックとICLの徹底比較表

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特徴レーシック (LASIK)ICL (眼内コンタクトレンズ)
手術方法角膜をレーザーで削る目の中にレンズを入れる
可逆性不可 (元に戻せない)可 (レンズ抜去可能)
ドライアイリスクあり (一時的)リスク低い
見え方の質良好だが夜間に低下することも非常に鮮明・高品質
強度近視対応不可の場合あり (削る量に限界)対応可能 (強み)
費用相場20万〜40万円前後40万〜80万円前後
医師の評価実績豊富で安価だが不可逆高価だが可逆性・質で優る

デスクワーカーの方のように「目の酷使」が前提であり、かつ「リスクを最小限に抑えたい」という慎重な性格の方には、費用はかかりますがICLの方が満足度が高い傾向にあります。

これは、「医師が選ぶならどちらか」という問いに対する、一つの回答でもあります。


まとめ:眼科医の「しない理由」を理解すれば、あなたの「する理由」が見えてくる

最後に、これまでの話をまとめましょう。

眼科医がメガネをかけているのは、「レーシックが危険だから」ではありませんでした。

  • 超近距離を見る顕微鏡手術への適正
  • 老眼年齢になっても裸眼で手元を見るための準備
  • 職業的な慎重さとリスク管理

これらが、医師がメガネを選ぶ合理的な理由です。

一方で、あなたは医師ではありません。

50cm先のモニターを見つめ続け、コンタクトによるドライアイや毎日のケアの煩わしさに悩むデスクワーカーです。

医師の事情とあなたの事情は違います。

「医者がやらないから」という理由だけで選択肢を閉ざす必要はありませんし、逆に「医者もやっているから」と安易に飛びつくべきでもありません。

重要なのは、あなたのライフスタイルにとって、その手術が「合理的」かどうかです。

尾内医師からのメッセージ

尾内 医師

医師がメガネをかけている事実だけで、手術を全否定する必要はありません。
ですが、心に不安が残る状態で手術を受けることは、精神衛生上よくありません。
術後の些細な見え方の変化を『失敗ではないか』と過度に気にしてしまい、結果として満足度が下がってしまうことがあるからです。
納得できるまで専門医と話し合い、メリットとデメリットを天秤にかけ、ご自身で『これなら大丈夫』と思えた時が、手術を受ける最適なタイミングです。

手術を受ける前に確認すべき「適正チェックリスト」

最後に、あなたが手術を検討する際、自分自身に問いかけてほしいチェックリストを用意しました。

これらを確認し、自分の状況を整理してから、クリニックのカウンセリングに足を運んでみてください。

▼ 最終確認用:あなたのライフスタイル別 おすすめ度判定シート

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チェック項目Yes / No判定ヒント
Q1. 仕事で一番見る距離は?50cm〜数mYesなら手術向き (デスクワーク・営業・運転など)
Q2. 現在の年齢は?20代〜30代後半Yesならメリット大 (老眼まで時間がある)
Q3. 角膜を削ることに抵抗は?強い抵抗があるYesならICLを検討 (可逆性を重視)
Q4. ドライアイは深刻?目薬が手放せないYesならICLを推奨 (レーシックは悪化リスク)
Q5. 1.0程度の視力で満足?2.0絶対主義Noなら要注意 (過矯正で疲れる恐れあり)

あなたの目は、一生あなたを支えてくれるパートナーです。

医師のメガネの謎が解けた今、冷静な頭で、あなた自身の「快適な視界」について考えてみてください。

その選択が、あなたの仕事もプライベートも、より鮮やかに変えてくれることを願っています。


参考文献

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