ICL手術後に視界がぼやけたり、乱視が戻ったように感じたりすると、「レンズがずれたのでは?」と強い不安に襲われるものです。
結論から言えば、レンズのずれや回転はごく稀なケースですが、もし生じたとしても適切な再調整(リカバリー)によって、本来のクリアな視界を確実に取り戻せますので安心してください。
本記事では、メディカルコンテンツ編集部が精神科専門医・尾内隆志医師の協力のもと、レンズがずれた際のサイン、物理的な原因、再手術の流れ、そして術後のメンタルケアまで網羅的に解説します。
あなたが今取るべき具体的なアクションを明確にし、最短で安心と視力を回復させるためのガイドです。
- 自分の症状がレンズのずれによるものか判定するセルフチェック指標
- レンズがずれる物理的な原因と再手術の具体的なプロセス・費用
- 術後の不安や「失敗したかも」というストレスに対する精神医学的アプローチ
放置は厳禁!ICLの「レンズのずれ」が疑われる代表的なサインと症状
ICL手術後、視界に違和感がある場合、それが「一時的な乾燥(ドライアイ)」によるものか、物理的な「レンズのずれ」によるものかを正しく見極める必要があります。
特に、仕事や私生活で長時間画面を注視する方にとって、わずかなピントのズレは脳への過剰な負担となり、知らぬ間に慢性的な疲労を蓄積させる原因となります。
このセクションでは、レンズが位置異常を起こしている際に出現する具体的な自覚症状について詳しく解説します。
急な視力低下や「乱視の戻り」を感じる

手術直後は非常にクリアに見えていた視界が、数週間から数ヶ月後に「なんだか以前の乱視のようなボヤけ方に戻った」と感じる場合、レンズの「回転」が疑われます。
特に乱視用ICL(トーリックレンズ)は、眼の中の特定の角度(軸)に合わせて固定されています。
このレンズがわずか10°回転するだけで、乱視矯正効果は約30%失われ、30°回転すると矯正効果はほぼゼロになります。
急にスマートフォンの文字が二重に見えたり、夜間の信号機が引き延ばされたように見える場合は注意が必要です。
特定の方向に視界が歪む、二重に見える
「片目をつぶっても、対象物が二重に見える」という症状は、レンズの光学的中心と瞳孔の中心がずれている際によく見られる兆候です。
これはレンズが中心から側方にシフトしてしまった場合に起こりやすく、脳が視覚情報を正しく処理できず、眼精疲労や頭痛を誘発する原因となります。
光の見え方(ハロー・グレア)が術後直後より明らかに悪化した
ICL特有の症状として、夜間の光の輪や眩しさがありますが、これらは通常、数ヶ月かけて脳が慣れていきます(神経適応)。
しかし、ある時期を境に「光の輪が以前より大きく、あるいは歪んで見えるようになった」という場合は、レンズの位置が変動し、レンズの縁を光が通過している可能性があります。
眼の奥の痛みや頭痛、激しい異物感を伴う場合
レンズが適切な位置から外れ、周囲の組織(虹彩など)を刺激している場合、鈍い痛みや異物感が生じることがあります。
また、レンズのサイズが眼のサイズに対して大きすぎる場合、眼圧が上昇し、それが頭痛や吐き気として現れることもあります。
眼圧が急激に上がっている場合は「緑内障発作」の可能性があるため、放置せず直ちに受診してください。
これは将来的な視能維持に関わるため、最も緊急性が高いサインです。
【セルフチェック表】この症状があればすぐに受診を
以下の項目に該当するか確認してください。
▼ICL術後トラブル・セルフチェック表を見る
| 症状項目 | ドライアイ・疲労の場合 | レンズのずれの疑い |
|---|---|---|
| 視力の変化 | 朝夕で変動する、目薬で改善する | 常に一定してボヤける、特定方向が歪む |
| 見え方の質 | 霞んで見える | 物が二重・三重に重なって見える |
| 光の見え方 | 全体的に眩しい | 光が特定の方向に長く伸びる |
| 眼の痛み | ゴロゴロする、染みる | 眼の奥が重い、ズキズキする(緑内障リスク) |
| 持続性 | 休憩すると良くなる | 休憩しても変わらない |
なぜICLレンズは動いてしまうのか?主な物理的原因とメカニズム
「自分の眼の中で何が起きているのか」を正しく知ることは、漠然とした不安を解消するための大きな助けになります。
仕組みや原因を客観的に理解することで、正体のわからない不安に振り回されることなく、冷静に次のステップを考えられるようになるからです。
ICLのレンズは通常、虹彩(茶目)と水晶体の間の「後房」という狭いスペースに浮くように固定されますが、いくつかの物理的要因によって位置が変動することがあります。
乱視用ICL(トーリックレンズ)特有の「回転」リスク
乱視用レンズは、眼内の特定の軸に固定されることで乱視を打ち消します。
再手術(位置修正)が必要となる頻度については、ある臨床報告では 1〜3% とも言われますが、症例数の多い大規模な最新データによれば約 0.1% 程度という極めて低い値も報告されています。
つまり、深刻なズレが起こることは実際には「ごく稀」なケースであると言えます。
レンズサイズと眼のスペースの不一致(サイジングミス)
ICL手術で最も重要なプロセスの一つが「サイズ選定」です。眼の奥行きや虹彩の裏側のスペースは一人ひとり異なります。
- 小さすぎる場合: レンズが固定されず、眼の中で泳いでしまい、回転や位置ずれを起こしやすくなります。
- 大きすぎる場合: レンズが強く突っ張り、虹彩を押し上げ、眼圧上昇のリスクを生じさせます。
術後の物理的衝撃や目を強くこする行為の影響
術後1週間はレンズがまだ不安定な状態です。この時期に「目を強くこする」「寝ている間に眼を押さえてしまう」などの行為は、物理的にレンズを動かしてしまう直接的な原因となります。
ヴォルト値(水晶体との距離)の異常がもたらすリスク

レンズと水晶体の間の隙間を「ヴォルト(Vault)」と呼びます。この値が適切でないと安定性に欠けます。
なお、多くの人でごく軽いレンズの回転(術後 1 ヶ月で平均 3〜4° 程度)は自然に起こることが観察されています。
この程度の微小な回転であれば、通常は視力に影響せず、脳が自然に適応するため過度な心配は不要です。
稀に起こる「レンズの落下」と「固定不全」の正体
極めて稀ですが、レンズの支持部(ハプティクス)が、本来の固定位置である毛様体溝(もうようたいこう)から逸脱してしまうことがあります。
レンズ位置修正・交換の手順と安全性・成功率
「再手術」という言葉に、初回以上の不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、ICLの大きな利点は、必要に応じてレンズを取り出したり入れ替えたりできる「可逆性」にあります。
位置の修正などは初回の手術よりも短時間で済むことが多く、安全面でも確立された手順で行われます。
レンズ回転を直す「位置修正手術」の具体的な流れ
レンズそのものに問題がなく、単に「回転」しているだけの場合は、レンズを正しい位置に戻す「位置修正術」が行われます。
- 麻酔: 最初の手術と同様、点眼麻酔で行います。痛みはほとんどありません。
- 位置調整: 創口(小さな穴)から専用の器具を入れ、レンズを正しい軸まで回転させます。
- 完了: 手術時間は 5〜10 分程度です。縫合の必要もありません。
サイズ不適合による「レンズ交換手術」が必要なケース
レンズのサイズが合っていないことが原因でずれている場合は、現在のレンズを取り出し、適切なサイズの新しいレンズに入れ替えます。
この際、レンズを摘出するために初回と同程度の手術が必要となります。
しかし、一度目の手術を経て眼内の状態を詳細に把握できているため、医師はより精度の高いレンズ選定や固定を行うことが可能です。
再手術にかかる時間・痛み・ダウンタイムのリアル
「またあの手術の緊張を味わうのか」という心理的負担は大きいですが、身体的負担は驚くほど少ないのが実情です。
- 手術時間: 5分〜15分。
- 痛み: 術中の痛みはほぼゼロ。術後数時間はゴロゴロする程度。
- 仕事復帰: 翌日からデスクワークが可能なケースがほとんどです。
位置修正後の見通しと安全性
レンズの位置修正を行った後の視力回復は非常に良好で、多くの方が「本来期待していたクリアな視界」を取り戻されています。
手術に伴う感染症や合併症のリスクについても、初回の手術と同様に万全の対策が取られており、安全性の高い処置が可能です。
術後いつまでに再手術を行うのがベストか?(タイミングの重要性)
もしレンズの回転(軸のずれ)が起きたとしても、早めに対処できれば過度に心配する必要はありません。
術後1〜3ヶ月ほどであれば組織の癒着が進んでいないため、体への負担を抑えながらスムーズに位置を調整できます。
あまり放置してしまうと、脳が「歪んだ見え方」に慣れようとしてしまい、後からレンズを正しい位置に戻しても違和感が抜けにくくなることがあるため、早めの確認が大切です。
実際、術後1ヶ月ほどでレンズが少し回転し、見え方に違和感を抱えられた30代の男性がいました。
彼は「再手術への怖さ」や「せっかく手術してもらったのに、不満を言うのは申し訳ない」という板挟みの思いから、数ヶ月間一人で悩まれていたそうです。
しかし、いざ相談して修正を受けると、処置は短時間で終了。 術後、「あんなに悩まず、もっと早く相談に来ればよかった」と、霧が晴れたような表情で話されていたのが印象的でした。
術後の強い不安と向き合う:精神医学から見た「視覚トラブル」とメンタルケア
ICL術後のトラブルで最も辛いのは、実は「見え方の悪さ」そのものよりも、それによって引き起こされる「精神的な不安」です。
「このまま一生治らなかったらどうしよう」「高いお金をドブに捨てたのではないか」という思考が止まらなくなる状態は、精神医学的にもケアが必要です。
ここでは、精神科専門医である尾内隆志医師のアドバイスを交え、メンタル面の立て直し方を解説します。
尾内 隆志 医師(精神科専門医)のアドバイス
尾内 医師視覚は、人間の五感から得る情報の 80% 以上を占めています。そのため、視界の不調は脳の『不安を司る部位(扁桃体)』をダイレクトに刺激し、強い生存の危機を感じさせます。術後に不安を感じ、検索が止まらなくなるのは、あなたの心が弱いからではなく、脳の正常な防衛反応です。まずはその不安を否定せず、『今は脳がアラートを出している状態なんだ』と客観的に認識することから始めましょう。
なぜ視界の不調はこれほどまでに「強い不安」を煽るのか
視覚情報のわずかなズレは、脳にとって「本来あるべき視界」とのエラー(感覚の不一致)となります。
このズレを補正しようと脳が過剰に働き続けると、慢性的な疲労から自律神経の乱れを招き、不眠や焦燥感といった心身の不調につながることも少なくありません。
不安から「ICL ずれた」と繰り返し検索してしまう行為は、この不一致によるストレスを解消し、安心感を得ようとする心理的な防御反応といえます。
「手術に失敗した」という自責の念から脱却するために
「自分で決めて受けた手術なのに」と自分を責める必要はありません。医療において、微調整(再手術)は「失敗」ではなく、ゴールへ到達するための「プロセス」の一部です。
メンタルを安定させるための生活習慣とデジタルデトックス
不安な時ほど、スマートフォンの画面を見る時間を減らしてください。特に夜間の検索は、ブルーライトによる睡眠障害と相まって、不安を倍増させます。
医師に不安を正しく伝え、信頼関係を再構築するコミュニケーション術
医師に対して「なんとなくおかしい」と伝えるのではなく、以下のように具体化して伝えてください。
- いつから?(例:3日前から急に)
- どんな時に?(例:夜、街灯を見た時に)
- どう見える?(例:光の線が時計の 2 時の方向に伸びる)
精神科・心療内科の受診を検討すべき「心のサイン」
もし、視界の問題が解決に向かっているはずなのに、「食欲がない」「夜全く眠れない」「仕事が手につかない」といった状態が 2 週間以上続く場合は、一人で抱え込まずにメンタルヘルスの専門家に相談してください。
再手術の費用と保証・セカンドオピニオンの受け方
経済的な不安は、身体的な不安と同じくらい重いものです。再手術にどれくらいの費用がかかるのか、今のクリニックで対応してもらうべきか、客観的な視点で判断しましょう。
一般的なクリニックの「再手術保証期間」と無償範囲
多くの大手ICLクリニックでは、術後 1 年〜3 年程度の「保証期間」を設けています。
- レンズ位置修正: 保証期間内であれば無料であることが多い。
- レンズサイズ交換: 医師が必要と判断した場合は無料、あるいはレンズ代の実費のみ。
保証期間外や他院での修正にかかる費用相場
もし保証期間を過ぎていたり、他院(手術を受けたところとは別の病院)で修正を受ける場合は、以下のような費用が発生する場合があります。
- 他院修正費用: 片目 10 万〜20 万円程度。
「今の先生が信じられない」時のセカンドオピニオン活用法
「先生に相談したけれど、気のせいだと言われた」という不信感がある場合、別のクリニックで検査を受ける「セカンドオピニオン」は非常に有効です。
診療録(カルテ)開示と紹介状の依頼マナー
セカンドオピニオンや他院での再手術を成功させる鍵は、正確な情報共有にあります。 可能であればカルテ開示を受け、以下のデータを新しい主治医に共有してください。
- ICLの機種・モデル名
- レンズの度数(乱視軸を含む)
- レンズサイズ
- 術後のヴォルト(Vault)値の推移
これらのレンズ情報が正確に伝わることで、新しい医師は「現在のレンズがなぜずれたのか」を科学的に分析でき、修正の成功率を飛躍的に高めることができます。
▼主要クリニックの保証・費用考え方一覧
| 項目 | 自院(手術した場所) | 他院(セカンドオピニオン) |
|---|---|---|
| 診察・検査 | 保証内なら無料〜数千円 | 初診料+検査代(5,000円前後) |
| 位置修正 | 1〜3年以内なら無料が多い | 10〜20万円+技術料 |
| レンズ交換 | 無料〜レンズ代実費 | 20万円以上かかるケースも |
| メリット | 経緯を知っている、安価 | 客観的な判断がもらえる |
術後の「ずれ」を予防し、クリアな視界を維持するために守るべきこと
今抱えている問題を解決した後は、二度と同じ不安を繰り返さないための「守りの習慣」を身につけましょう。
術後の経過観察(定期検診)を絶対に怠ってはいけない理由
「よく見えているから」と検診をサボるのは危険です。
初期のわずかなレンズの回転は、自覚症状がなくても医師の検査で見つかることがあります。早期発見できれば、より簡単な処置で済みます。
日常生活で注意すべき「目を触るクセ」の矯正
無意識に目をこするクセがある方は、特に注意が必要です。眼球への強い圧迫は、レンズを支持組織から浮かせてしまうリスクがあります。
スポーツや仕事復帰の適切なタイミングと注意点
術後1ヶ月は眼内組織が安定する大事な時期です。球技(サッカー、バスケットボールなど)や水泳、激しいワークアウトは、必ず医師の許可が出てから再開してください。
ITエンジニアの方は、こまめに目を休ませ、ドライアイを防ぐことで、レンズのコンディションを良好に保てます。
万が一、再び違和感が出た時の初動対応
「またおかしいかも?」と思ったら、迷わずその日のうちにクリニックへ電話してください。早期の相談が、再度の再手術を防ぐ最大の手立てです。
FAQ:ICLの「ずれ」に関するよくある質問
ICL後の違和感や再手術に関して、患者様から頻繁に寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。失明のリスクや再発の可能性など、不安を解消するための具体的な回答を簡潔に提示します。
ICLの違和感、一人で悩まずご相談ください
ICLのズレや回転は、専門的な処置でリカバリーが可能です。不確かな情報で悩む前に、まずは正確な診断を受けることが解決への第一歩となります。
診療内容や全国のクリニック情報の詳細は、先進会眼科の公式サイトをご確認ください。
■ 先進会眼科 公式サイトhttps://senshinkai-clinic.jp/
ICLトラブル解決のための重要アクションチェックリスト
- [ ] 症状をメモする: 「いつから」「どう見えるか」を紙に書き出す。
- [ ] クリニックへ連絡: 「術後の違和感がある」と伝え、最短で予約を取る。
- [ ] 夜間の検索をやめる: 21時以降はスマホを置き、脳を休ませる。
- [ ] 保証内容を確認: 契約時の書類やウェブサイトで保証期間を確認する。
- [ ] 正確なデータ共有: セカンドオピニオン時はレンズのモデル・度数・サイズ・Vault値を伝える。
あなたの視界が、一日も早く元の輝きを取り戻すことを願っています。
参考文献・引用元

