ICL(眼内コンタクトレンズ)の手術費用は、医療費控除の対象です。
「手術を受けたいけれど、費用が高額で踏み切れない……」
「確定申告なんてやったことがないから、難しそうで不安……」
もしあなたがそう感じているなら、この記事はまさにあなたのためのものです。ICLは自由診療(保険適用外)であるため、どうしても初期費用は高額になります。
しかし、国が定めた「医療費控除」という制度を正しく利用することで、実質的な負担額を数万円から、場合によっては十数万円も安く抑えることが可能です。
会社員の方にとって、年末調整以外の税金手続きは馴染みが薄く、ハードルが高く感じるかもしれません。しかし、今はスマホ一台で、自宅から簡単に申請ができる時代です。
この記事では、医療・ヘルスケア領域の専門ライターチームである「メディカルコンテンツ編集部」が、以下の3点を徹底的に分かりやすく解説します。
- 【年収別】あなたの還付金目安が一目でわかる早見表
- 手術代以外に「対象になる費用」と「ならない費用(ローン手数料等)」の明確な境界線
- スマホで完結!初めてでも迷わない確定申告(e-Tax)の5ステップ
読み終える頃には、「自分にもできる」「これだけ戻ってくるなら手術を受けよう」と、自信を持って次の一歩を踏み出せるようになっているはずです。
ICL手術は医療費控除の対象【国税庁の見解】
結論から申し上げますと、ICL(眼内コンタクトレンズ)手術にかかる費用は、間違いなく医療費控除の対象となります。
多くの人が「視力矯正は美容整形のような扱い(贅沢品)で、医療費控除の対象外ではないか?」という疑問を抱きますが、これは誤解です。
ICLは、眼科専門医によって行われる「視機能回復のための治療」であり、国税庁も正式に医療費として認めています。
まずは、制度の根拠と仕組みを正しく理解し、安心して申請の準備を進めましょう。
視力回復治療は「医療行為」として認められている
ICLだけでなく、レーシック手術や白内障手術など、眼科医が行う視力回復治療は、所得税法上の「医療費」に該当します。
国税庁の公式ウェブサイト「タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費」には、以下のような記述があります。
国税庁 タックスアンサー No.1122 より引用
「視力回復レーザー治療(レーシック手術)の対価は、眼の機能そのものを回復させる治療の対価と認められますので、医療費控除の対象となります。」
ICLはレーシックと同様に「眼の機能を回復させる治療」であるため、この規定が適用されます。
また、オルソケラトロジー(角膜矯正療法)治療も同様に対象です。
ただし、単なる近視補正のための眼鏡やコンタクトレンズ購入費用は、治療ではないため原則として対象外となる点には注意が必要です。
重要なのは、「医師による診療または治療の対価」であるという点です。
ICLは高度な医療技術を要する手術であり、美容目的ではなく、生活の質(QOL)を著しく低下させる「強度近視」などの治療手段として認められているのです。
医療費控除とは?制度の仕組みを3行で解説
そもそも医療費控除とはどのような制度なのでしょうか。難しく考える必要はありません。以下の3つのポイントを押さえておけば十分です。
- 1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の合計を計算します。
- その合計額が「10万円(または総所得金額等の5%)」を超えた場合、その超過分が所得から差し引かれます(控除)。
- 結果として、「払いすぎた所得税が銀行口座に現金で戻ってくる(還付)」うえに、「翌年の住民税が安くなる」というダブルの節税メリットがあります。
ICLの手術費用は一般的に40万円〜80万円程度と高額ですので、手術を受けた年はほぼ確実に「10万円」のハードルを超え、控除の対象となります。
申請をしないと、本来払わなくて済むはずの税金を払い続けることになり、非常にもったいないことになります。
【年収別シミュレーション】あなたの還付金はいくら?

では、実際にあなたの手元にはいくらお金が戻ってくるのでしょうか?
これが最も気になるポイントだと思います。医療費控除によるメリットは、「① 所得税からの還付金(現金振込)」と「② 住民税の減税(翌年の手取りアップ)」の2つを合わせた金額です。
ご自身の年収と、検討しているICLの手術費用を照らし合わせて、実質負担額がどれくらい下がるのかを確認してみましょう。
年収別・還付金額早見表
▼ 年収別・医療費控除メリット早見表
※ご注意(必ずお読みください):
本表は、独身・扶養家族なし・基礎控除のみを考慮した簡易モデルによる概算の目安です。
実際の控除額は、あなたの課税所得(給与収入から各種控除を引いた額)や、生命保険料控除、住宅ローン控除などの有無によって増減します。
特に年収400万円や600万円などの境界付近の年収帯では、詳細な条件により税率区分が変わる可能性があるため、正確な金額を知るには、お手元の源泉徴収票に基づき、国税庁サイト等で試算を行ってください。
| あなたの年収 | ICL費用 60万円の場合 | ICL費用 70万円の場合 | ICL費用 80万円の場合 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約 7.5万円 お得 (所得税2.5万+住民税5.0万) | 約 9.0万円 お得 (所得税3.0万+住民税6.0万) | 約 10.5万円 お得 (所得税3.5万+住民税7.0万) |
| 400万円 | 約 7.5万円 お得 (所得税2.5万+住民税5.0万) | 約 9.0万円 お得 (所得税3.0万+住民税6.0万) | 約 10.5万円 お得 (所得税3.5万+住民税7.0万) |
| 500万円 | 約 10.0万円 お得 (所得税5.0万+住民税5.0万) | 約 12.0万円 お得 (所得税6.0万+住民税6.0万) | 約 14.0万円 お得 (所得税7.0万+住民税7.0万) |
| 600万円 | 約 10.0万円 お得 (所得税5.0万+住民税5.0万) | 約 12.0万円 お得 (所得税6.0万+住民税6.0万) | 約 14.0万円 お得 (所得税7.0万+住民税7.0万) |
| 700万円 | 約 11.5万円 お得 (所得税6.5万+住民税5.0万) | 約 13.8万円 お得 (所得税7.8万+住民税6.0万) | 約 16.1万円 お得 (所得税9.1万+住民税7.0万) |
| 800万円 | 約 11.5万円 お得 (所得税6.5万+住民税5.0万) | 約 13.8万円 お得 (所得税7.8万+住民税6.0万) | 約 16.1万円 お得 (所得税9.1万+住民税7.0万) |
| 900万円 | 約 11.5万円 お得 (所得税6.5万+住民税5.0万) | 約 13.8万円 お得 (所得税7.8万+住民税6.0万) | 約 16.1万円 お得 (所得税9.1万+住民税7.0万) |
| 1000万円 | 約 16.5万円 お得 (所得税11.5万+住民税5.0万) | 約 19.8万円 お得 (所得税13.8万+住民税6.0万) | 約 23.1万円 お得 (所得税16.1万+住民税7.0万) |
実質負担額の計算例(年収550万円のケース)
ここで、より具体的なイメージを持っていただくために、モデルケースを使って計算してみましょう。
32歳、IT企業勤務、独身、年収550万円の方が、66万円のICL手術を受けた場合です。
まず、年収550万円の方の所得税率は、概ね 20% です(※課税所得金額による)。
そして、住民税率は一律 10% です。
つまり、控除対象となる金額の 約30% が戻ってくる計算になります。
- 医療費控除の対象額を計算
66万円(手術費) - 10万円(足切り額) = 56万円 - 戻ってくるお金(メリット)を計算
56万円 × 30%(税率合計) = 16万8,000円
なんと、約16万8,000円も実質負担が軽くなります。
66万円の手術が、実質 49万2,000円 で受けられることになります。「高いから諦めようかな」と迷っていた方にとって、この差は非常に大きいのではないでしょうか。
この金額は、コンタクトレンズ代(1ヶ月5,000円として年間6万円)の約3年分に相当します。長期的な視点で見れば、ICLは決して高すぎる投資ではないと言えるでしょう。
※所得税率についての重要な補足
所得税率は「累進課税」となっており、課税所得金額によって5%〜45%の段階があります。
上記の計算は所得税率20%と仮定していますが、社会保険料控除などが多く課税所得が低い場合、適用される税率が10%または5%となることがあります。
そのため、控除額の一部は20%、残りは10%で計算されるなど、実際の還付額が概算よりも少し少なくなるケースがあります。
正確な額は確定申告書の作成時に自動計算されますので、あくまで「最大期待値」としての目安とお考えください。
夫婦・共働き世帯は「年収が高い方」で申告すべき
もしあなたがご結婚されていて、ご夫婦ともに収入がある場合は、「家族の中で一番年収が高い人」がまとめて申告することをおすすめします。
日本の所得税は「累進課税」といって、年収(課税所得)が高ければ高いほど、適用される税率が高くなる仕組みになっています。
税率が高い人が控除を受けた方が、還付される金額も大きくなるからです。
例えば、夫の年収が600万円(税率20%)、妻の年収が300万円(税率10%)の場合、同じ医療費控除額でも、夫の方で申告した方が戻ってくる税金が倍近く変わる可能性があります。
生計を一にしている家族であれば、医療費を合算して申告することが認められています。
税理士によるワンポイント・アドバイス
「共働きのご夫婦の場合、『誰が申告するか』で手元に残るお金が数万円単位で変わることがよくあります。源泉徴収票を見比べて、『課税される所得金額』が多い方でまとめて申告するのが鉄則です。
また、年収が200万円未満の方は『所得の5%』を超えれば対象になるため、あえて年収が低い方で申告した方が有利になるレアケースもありますが、ICLのような高額医療費の場合は、基本的には高所得者の方で申告するメリットの方が大きいでしょう。」
どこまで入れる?対象になる費用・ならない費用の境界線

医療費控除を申請する際、最も注意が必要なのが「費用の仕分け」です。
「これも入れていいのかな?」と迷ったり、逆に入れてはいけないものを入れてしまって税務署から指摘を受けたりするのは避けたいものです。
ここでは、ICL手術に関連する費用の中で、控除の対象になるもの(〇)と、ならないもの(×)の境界線を明確にします。
〇 対象になる費用(交通費など)
基本的には「治療に直接必要な費用」はすべて対象となります。
- 手術費用: レンズ代、手術技術料を含む全額。
- 検査費用: 適応検査(手術前の精密検査)、術後の定期検診費用。
- 医薬品代: 術後に処方される点眼薬、痛み止め、保護メガネ代(医師の指示によるもの)。
- 通院交通費: 自宅からクリニックまでの電車賃、バス代。
手術当日だけでなく、適応検査、翌日検診、1週間後検診、1ヶ月後検診……と、ICLは意外と通院回数が多い治療です。遠方のクリニックに通う場合、交通費だけでも数万円になることがあります。
電車やバスでは領収書が出ないことがほとんどですが、心配いりません。
「乗車区間(自宅最寄駅〜クリニック最寄駅)」と「運賃」をメモに残しておけば、証拠として認められます。
私自身も確定申告の際、領収書のない交通費の集計にはExcel(スプレッドシート)を活用しました。
「日付」「利用した交通機関」「区間」「金額」「目的(術後検診など)」の5項目を表にしておくだけで、申告時の入力が驚くほどスムーズになります。
このメモは提出義務はありませんが、万が一税務署から確認が入った際に、自信を持って回答するための強力な資料になります。
× 対象にならない費用(ガソリン代・金利など)
一方で、以下の費用は医療費控除の計算に含めることができません。これらを誤って含めてしまうと、申告内容の修正(過少申告加算税などのペナルティ)が必要になるリスクがあります。
- 自家用車のガソリン代・駐車場代:
車で通院した場合でも、ガソリン代やコインパーキング代は対象外です。「公共交通機関での移動が困難」な場合を除き、タクシー代も原則認められません。 - 医療ローン・分割払いの「金利手数料」:
ここが最大の注意点です。ローンを利用した場合、手術代の元本は控除対象になりますが、分割手数料(金利)部分は対象外です。 - 予防接種・サプリメント:
医師の治療として処方されたもの以外(市販のビタミン剤など)は対象外です。
重要:医療ローンを利用した場合の申告タイミング
ローンやクレジットカードの分割払いを利用した場合、手元の通帳から引き落としが完了していなくても、「信販会社がクリニックに立替払いをした年」の医療費として全額申告できます。
(例:2024年12月に手術しローン契約 → 2025年から引き落とし開始の場合でも、2024年分の医療費として申告可能)
ただし、この場合も申告できるのは「手術代金そのもの」だけであり、上乗せして支払う「金利・手数料」は一切含めることができないので、契約書をよく確認して元本部分のみを抜き出して計算してください。
ICLを受けた人の確定申告 5ステップ【スマホで完結】
「制度はわかったけれど、手続きが面倒くさそう……」
そう思っているあなたに朗報です。現在の確定申告(e-Tax)は、以前とは比べ物にならないほど進化しており、スマホだけで、早ければ30分程度で完結します。
わざわざ税務署に行って長い列に並ぶ必要はありません。自宅のソファでリラックスしながら、還付金を受け取るための5つのステップを進めていきましょう。
Step1:必要な書類を準備する
まずは手元に以下のものを揃えてください。これが揃えば準備の8割は完了です。
- 源泉徴収票: 勤務先から12月〜1月頃に配布されます。
- 医療費の領収書: ICLの手術代、検査代、薬代など全て。
- Note: 領収書は税務署への提出は不要ですが、自宅で5年間保存する義務があります。ICLの領収書は高額証明の要ですので、絶対に捨てずに専用のクリアファイル等で保管してください。
- 交通費のメモ: 前述のExcelや手書きメモ。
- マイナンバーカード: 署名用パスワード(英数字6〜16桁)も確認しておきましょう。
- スマートフォン: 「マイナポータル」アプリをインストールしておくとスムーズです。
- 還付金を受け取る銀行口座の番号
Step2:国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
準備ができたら、SafariやChromeなどのブラウザで国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。
トップ画面に「作成開始」ボタンがありますので、そこをタップ。「スマートフォンを使用してe-Tax」を選択します。
画面の指示に従い、マイナンバーカードをスマホの背面に当てて読み取らせることで、住所や氏名の入力が自動化され、本人確認が完了します。
Step3:医療費の入力(「医療費のお知らせ」vs 領収書入力)
ここが最重要ステップです。
確定申告のメニューから「医療費控除」を選択します。
ここでよくある質問が、「健康保険組合から送られてくる『医療費のお知らせ』ハガキは使えるの?」というものです。
残念ながら、ICLは自由診療(保険適用外)であるため、『医療費のお知らせ』には記載されていないことがほとんどです。
そのため、入力方法の選択画面では「領収書から入力する」を選んでください。
入力画面では以下の情報を打ち込みます。
- 医療を受けた人(自分)
- 病院・薬局などの名称(例:〇〇眼科クリニック)
- 医療費の区分(「診療・治療」にチェック)
- 支払った医療費の金額
1件ずつ入力するのが大変な場合は、国税庁が提供している「医療費集計フォーム(Excel)」にあらかじめ入力しておき、そのファイルを読み込ませることで一括入力も可能です。
ICL単体の場合は件数が少ないので、直接入力でもすぐに終わります。
Step4:還付金受取口座の指定と送信
医療費の入力が終わると、自動的に還付金額が計算され、画面に「還付される金額は 〇〇円 です」と表示されます。この瞬間が一番達成感を感じる時です。
金額を確認したら、そのお金を振り込んでほしい銀行口座(必ず本人名義のもの)を入力します。ネット銀行やゆうちょ銀行など、ほとんどの金融機関が指定可能です。
最後に、入力内容に間違いがないかを確認し、再度マイナンバーカードを読み取って電子署名を行い、データを送信します。「送信完了」の画面が出れば手続きは終了です。
Step5:還付金の入金確認(時期の目安)
e-Tax(電子申告)の場合、データ送信から概ね2週間〜3週間程度で指定した口座に還付金が振り込まれます。(1月・2月の早期に申告した場合はさらに早いこともあります)。
入金前後には、税務署から「国税還付金振込通知書」というハガキが届きます。これが届いたら、通帳を確認して、無事に還付された自分へのご褒美を考えましょう。
よくある質問(FAQ)
最後に、ICLの医療費控除に関して、当編集部によく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
勘違いしやすいポイントを事前にチェックして、ミスのない完璧な申告を目指しましょう。
まとめ:ICLは医療費控除で賢く受けるべき
ICL手術は、決して安い買い物ではありません。
しかし、ここまで解説してきた通り、「医療費控除」という正当な権利を行使することで、実質的な負担を大きく、確実に減らすことができます。
最後に、重要なポイントをおさらいしましょう。
- ICLは医療費控除の対象:国が認めた「治療」であり、胸を張って申告してOKです。
- 還付金はバカにならない:年収によりますが、数万円〜十数万円が戻ってくる可能性があります。
- スマホで簡単申請:e-Taxを使えば、面倒な計算や税務署への訪問は不要です。
手術を受けるかどうか迷っている今の段階で、まずは「適応検査」を受けてみることを強くおすすめします。
なぜなら、適応検査を受けて初めて「自分は手術を受けられる目なのか」「正確な見積もり金額はいくらなのか」が判明し、それによって還付金の計算もより正確になるからです。
多くのクリニックでは適応検査を無料、あるいは数千円で実施しています。まずは自分の眼の状態と正確な費用を知ることが、視力回復への第一歩、そして賢い節税への第一歩です。
確定申告に向けたTODOリスト
| チェック | TODOリスト | 備考 |
| □ | ICL手術の領収書を確保・保管 | 再発行できない場合が多いので厳重管理! |
| □ | 通院交通費のメモ作成 | 日付、区間、運賃をExcelやノートに記録 |
| □ | 源泉徴収票の受取 | 12月〜1月に会社から発行される原本を確認 |
| □ | マイナンバーカードのパスワード確認 | 署名用電子証明書(英数字6桁以上)が必要 |
| □ | 「ふるさと納税」情報の準備 | ワンストップ特例利用者も、寄附受領証を用意 |
さあ、あなたも賢く制度を利用して、クリアな視界と経済的なメリットの両方を手に入れましょう。
参考文献・リンク

