AGA治療「しないほうがいい」は本当?後悔する人の特徴と5つの判断基準【精神科医監修】
AGA治療「しないほうがいい」は本当?後悔する人の特徴と5つの判断基準【精神科医監修】

AGA治療「しないほうがいい」は本当?後悔する人の特徴と5つの判断基準【精神科医監修】

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この記事の監修者
尾内 隆志 (おない たかし) Takashi Onai, M.D.
  • 資格:公益社団法人 日本精神神経学会 精神科専門医
  • 所属・役職:医療法人社団青雲会 北野台病院 理事長
  • 専門分野:臨床精神科医学一般、EDに伴う心理的側面
  • 医籍登録:医師免許取得:平成12年5月(医籍登録番号:409881)
学歴・職歴(要点を表示)
【学歴】
郁文館高等学校(平成3年4月〜平成6年3月)
聖マリアンナ医科大学 医学部医学科(平成6年4月〜平成12年3月)

【職歴】
東京大学医学部附属病院 精神神経科(平成12年4月〜平成13年5月)
針生ヶ丘病院 精神科(平成13年6月〜平成15年5月)
初石病院 精神科(平成15年6月〜平成17年5月)
手賀沼病院 精神科(平成17年6月〜平成18年12月)

理事長/院長よりご挨拶:
昭和32年の開院以来、地域の皆様に支えられ半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。社会や生活スタイルの変化に伴い精神医療も大きく変化しています。私たちは優しく開かれた医療をめざし、地域に根ざした活動を推進し、患者様・ご家族に安心いただけるホスピタルづくりに尽力してまいります。

結論:AGA治療は「全員がやるべきもの」ではありません。

「効果が出ない」「副作用がつらい」「費用が続かない」という後悔の多くは、あらかじめリスクを把握し、対策を立てておくことで回避できます。

本記事では、精神科医の尾内先生監修のもと、医学的根拠とメンタルケアの視点から、あなたが「治療を始めるべきか、やめるべきか」を納得して決めるための判断材料を提供します。

この記事でわかること

  • データで見る「AGA治療で後悔する確率」と具体的理由
  • 「しないほうがいい」人の5つの特徴と、やめる勇気
  • 副作用(ED・鬱)への不安を解消する医学的リスク管理術

目次

「AGA治療で後悔した」の実態調査と医学的理由

AGA(男性型脱毛症)治療を検討する際、多くのクリニック公式サイトでは「フサフサになった成功事例」ばかりが強調されています。

しかし、これから治療を始めようか迷っているあなたにとって本当に必要な情報は、光の部分ではなく「影」の部分、つまりリスクやデメリットではないでしょうか。

実際にAGA治療を経験した人の声を分析すると、後悔の理由は大きく分けて「効果の実感」「経済的負担」「副作用への不安」の3つに集約されます。

まずは、それぞれの後悔がなぜ起こるのか、医学的なデータと事実に基づいて詳細に解説していきます。

漠然とした不安を「数値」や「事実」として捉え直すことで、冷静な判断ができるようになるはずです。

【副作用】性機能障害(ED)や鬱のリスクは数%の現実

多くの男性にとって、薄毛の悩みと同じくらい、あるいはそれ以上に深刻なのが「男性機能」への影響ではないでしょうか。

「ハゲは治したいが、その代償として不能になるのは絶対に嫌だ」というのは、痛切な本音だと思います。

フィナステリド(プロペシアの主成分)やデュタステリド(ザガーロの主成分)といったAGA治療薬の添付文書には、確かに副作用として性機能障害(リビドー減退、勃起機能不全、射精障害など)が記載されています。

では、その確率は具体的にどの程度なのでしょうか。

国内で行われたプロペシアの長期投与試験(1mg/日)などのデータによると、性機能に関する副作用の発現率は約1〜5%程度と報告されています。

AGA治療薬の副作用発現率を示すピクトグラム図。100体のうち数体だけが赤く強調されており、大多数は影響がないことを視覚的に表している。

▼ データで見る主な副作用の発現率

スクロールできます
薬剤名副作用項目発現率の目安出典・備考
フィナステリドリビドー(性欲)減退1.1% 〜 5.0%添付文書より
勃起機能不全 (ED)1.0%未満添付文書より
デュタステリドリビドー減退1.0% 〜 5.0%添付文書より
勃起機能不全 (ED)4.0% 〜 5.0%国際共同試験結果
ミノキシジル内服多毛症高頻度国内未承認のため正確な統計なし
動悸・息切れ不明循環器系への負担あり

※数値は調査対象や期間により変動します。あくまで目安として参照してください。

「100人に数人」という数字をどう捉えるかは個人の価値観によりますが、決して「全員がなる」わけではありません。

しかし、ここで無視できないのが「ポストフィナステリド症候群(PFS)」と呼ばれる現象です。

これは、投薬を中止した後も性機能障害や鬱症状が持続してしまうというもので、海外を中心に報告例があり、議論が続いています。

頻度は極めて稀であると考えられていますが、医学的に完全に解明されていないリスクが存在することは、誠実に伝えておく必要があります。

また、AGA治療における副作用には、薬理的な作用だけでなく「心理的な作用」が大きく関わっていることをご存じでしょうか。

ここで、精神科医の尾内先生に解説していただきます。

尾内医師 (精神科専門医) のアドバイス

尾内 医師

精神科医の立場から補足すると、AGA治療におけるEDや性欲減退は『薬理的な作用』だけでなく、『薬を飲んでいるという不安』からくる心因性の影響(ノシーボ効果)も無視できません。
ノシーボ効果とは、プラシーボ効果(偽薬でも効くと信じると効果が出る現象)の逆で、『副作用が出るかもしれない』と強く思い込むことで、実際に体に不調が現れてしまう現象です。
特に性機能はメンタルと密接に連動しています。
『薬のせいで勃起しないのではないか』という過度な心配(予期不安)が緊張を生み、その緊張が原因でEDのような症状を引き起こしているケースも、臨床現場では決して珍しくありません。
もちろん、身体的な副作用の可能性はゼロではありませんが、心の状態が症状を増幅させている可能性も視野に入れる必要があります。

つまり、「副作用が怖い」という恐怖心そのものが、後悔の原因を作り出してしまうパラドックスがあるのです。

リスクを知ることは大切ですが、必要以上に恐れすぎることもまた、治療の妨げになり得るという事実を理解しておきましょう。

先生の解説にもある通り、「一人で不安を抱え込まないこと」が、後悔しない治療の第一歩です。

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【初期脱毛】「逆にハゲた」と絶望する魔の1ヶ月目

初期脱毛のメカニズムを説明する3段階の図。治療前、初期脱毛(新しい髪が古い髪を押し出す)、改善期(太い髪が育つ)の順に毛根の変化を示し、初期脱毛が薬が効いている証拠であることを解説している。

AGA治療を始めて最も後悔しやすいタイミング、それは治療開始から1〜2ヶ月目です。

なぜなら、髪を生やすために治療を始めたはずなのに、一時的に「治療前よりも抜け毛が増えて薄くなる」現象が起こるからです。

これを「初期脱毛」と呼びます。

多くの人が、この初期脱毛の存在を知らずに、あるいは頭ではわかっていても実際の抜け毛の量にパニックになり、「この薬は自分には合わない」「騙された」と自己判断して治療をやめてしまいます。

これが、AGA治療における典型的な「失敗パターン」の筆頭です。

初期脱毛が起こる理由は、副作用ではなく、むしろ「薬が効いている証拠」です。

AGAを発症した毛根では、ヘアサイクル(毛周期)が乱れ、髪が太く育つ前に抜け落ちてしまう状態が続いています。

治療薬によってヘアサイクルが正常化しようとすると、弱って抜け落ちる寸前だった古い髪(休止期の髪)が、新しく生えてくる強く太い髪(成長期の髪)に押し出される形で一斉に抜け落ちます。

これが初期脱毛の正体です。

いわば、新しい家を建てるために、古いボロボロの家を取り壊している工事期間のようなものです。

このメカニズムを理解していれば、「今は生え変わりの準備期間だ」と冷静に受け止められますが、知らなければ恐怖でしかありません。

取材メモ:多くの患者さんが語る「排水溝の恐怖」

多くのAGA治療経験者に取材をする中で、異口同音に語られるのがこの「初期脱毛」の衝撃です。

ある患者さんは、「飲み始めて3週間頃、洗髪時の指に絡まる抜け毛が倍増し、排水溝が真っ黒になるのを見て背筋が凍った」と当時の恐怖を語ってくれました。

「薬を飲んでいるのに、なぜ?」とパニックになり、鏡で見る生え際が余計に後退したように感じてしまう―これは決して珍しいケースではありません。

しかし、そこで踏み止まり、「これは通過儀礼だ」と信じて服用を続けた人だけが、3ヶ月後に「抜け毛がピタリと止まる瞬間」を迎えています。

この恐怖は、治療成功への登竜門のようなものと言えるでしょう。

初期脱毛は通常、開始から2週間〜1ヶ月頃に始まり、長くても3ヶ月程度で収まります。

この「魔の期間」を耐えられるかどうかが、後悔しないための大きな分かれ道となります。

【経済的負担】「一生払い続ける」サブスク地獄の真実

「AGA治療 しないほうがいい」と言われる理由の大きな一つに、経済的な負担があります。

AGA治療は、一度始めたら基本的には「終わり」がありません。

風邪薬のように「治ったら飲むのをやめる」というものではなく、飲み続けている間だけヘアサイクルを正常に保つことができる対症療法だからです。

治療をやめれば、薬の効果で抑えられていた男性ホルモンの影響が再び現れ、ヘアサイクルは元のAGAの状態に戻ります(リバウンド)。

つまり、髪を維持したいと願う限り、一生涯にわたって治療費を払い続けなければならないのです。

これはまさに、解約するとサービスが受けられなくなる「サブスクリプション(定額課金)」と同じ構造です。

では、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。

一般的なクリニックでフィナステリドとミノキシジル(外用または内服)を併用した場合、月額10,000円〜15,000円程度が相場です。

これを30年間続けると仮定してみましょう。

月額15,000円 × 12ヶ月 × 30年 = 540万円

高級車が一台買える金額になります。

もちろん、ある程度生え揃った段階で維持療法(フィナステリドのみ等)に切り替えれば、月額3,000円〜5,000円程度に抑えることは可能です。

それでも、30年で100万円以上の出費は確実です。

この長期的なコストを計算せず、「初回キャンペーンで月々数千円」という広告に惹かれて安易に契約してしまうと、数ヶ月後に通常料金に戻ったタイミングで支払いが苦しくなり、後悔することになります。

「髪」にそこまでの投資価値を感じるかどうか。

これは医学の問題ではなく、あなたの人生における優先順位と価値観の問題です。


AGA治療を「しないほうがいい人」5つのパターン

ここまで、AGA治療のリスクや負担について解説してきました。

これらを踏まえた上で、あえて断言します。

AGA治療は万人に必須の医療ではありません。

あなたのライフステージや価値観によっては、「治療をしない」という選択こそが正解である場合も多々あります。

ここでは、具体的にどのような人が「AGA治療をしないほうがいい(やめたほうがいい)」のか、5つのパターンを提示します。

もしこれらに当てはまるなら、無理に治療を始める必要はありません。

近いうちに「子作り(妊活)」を計画している人

もしあなたが、現在パートナーと妊活中である、あるいは近いうちに子作りを計画している場合、AGA治療薬(特にフィナステリドやデュタステリドといった内服薬)の服用は慎重になるべき、あるいは一時中断すべきです。

これらの薬剤は、男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の働きを抑制することで薄毛を防ぎますが、この作用は胎児、特に男児の生殖器の正常な発育を阻害する可能性があります。

もちろん、男性が服用した場合、精液中に移行する薬剤の成分は極めて微量であり、通常の使用において胎児への影響は無視できるレベルであるとされています。

しかし、リスクがゼロであるとは言い切れませんし、何より「万が一」のことがあった時の精神的な後悔は計り知れません。

また、薬剤そのものに触れること(経皮吸収)も、妊娠中の女性にとっては禁忌とされています。

このため、日本皮膚科学会のガイドラインや添付文書でも注意喚起がなされています。

尾内医師の補足

尾内 医師

妊活においては、医学的なリスクだけでなく、パートナーとの信頼関係も重要です。
たとえ医学的に影響が軽微だとしても、『薬のせいで何かが起きたらどうしよう』という不安をパートナーに抱かせたまま妊活を行うのは推奨できません。
精神的な安定のためにも、妊活期間中は休薬するという選択肢を積極的に検討すべきでしょう。

休薬期間(ウォッシュアウト)については、薬剤が体から完全に抜けるまでの期間を考慮する必要があります。

  • フィナステリド(プロペシア等): 服用中止から1ヶ月以上
  • デュタステリド(ザガーロ等): 服用中止から6ヶ月以上

デュタステリドは半減期が長く、体内に長く留まる性質があるため、より長い期間の避妊(休薬)が必要です。

この期間を待てない、あるいはパートナーと相談ができていない場合は、治療を開始すべきではありません。

「即効性」を求めており、半年待てない人

「来月の友人の結婚式までにフサフサにしたい」

「夏までに海に行けるようにしたい(現在5月)」

このように、数週間から1〜2ヶ月といった短期間での劇的な変化を求めているなら、AGA治療はおすすめしません。

なぜなら、医学的に見て髪が生えるまでには最低でも3〜6ヶ月の時間がかかるからです。

髪には毛周期(ヘアサイクル)があり、一度抜けてから次に生えてくるまでに休止期という期間があります。

治療薬を飲んだからといって、植物に肥料をやるように翌日いきなり伸びるわけではないのです。

さらに、先述した「初期脱毛」の期間も含めると、最初の3ヶ月くらいは見た目が変わらない、あるいは一時的に悪化して見える時期さえあります。

即効性を求めるあまり、過剰な期待を抱いて治療を始めると、「全然効かないじゃないか」と1〜2ヶ月でやめてしまうことになり、結果として時間とお金の無駄(サンクコスト)になってしまいます。

短期間で見た目を変えたいのであれば、AGA治療(医療)ではなく、ウィッグ(かつら)や増毛エクステ、あるいはヘアパウダーといった物理的な対処法を選ぶほうが、目的には合致しています。

メンタルヘルスが不安定で、些細な変化が気になる人

薄毛の悩みは深く、自己肯定感を著しく低下させることがあります。

しかし、もしあなたが現在、薄毛のことばかり考えて一日中憂鬱になったり、鏡を見るたびに絶望的な気分になったりしているなら、まずは内服治療よりも心のケアを優先すべきかもしれません。

中には「身体醜形障害(醜形恐怖症)」に近い心理状態に陥っているケースがあります。

これは、客観的にはそれほど目立たない、あるいは些細な欠点にとらわれ、それが原因で社会生活に支障をきたしてしまう状態です。

このような状態でAGA治療を始めると、以下のような悪循環に陥るリスクがあります。

  • 薬を飲み始めるが、毎日鏡を見て「まだ生えない」「昨日より抜けた気がする」と一喜一憂し、ストレスが増大する。
  • ストレスによるホルモンバランスの乱れや血行不良が、さらに頭皮環境を悪化させる。
  • 初期脱毛や軽微な副作用が出た際に、「もう終わりだ」と過剰に反応し、パニックになる。
  • 結果として、髪が生えても満足できず(「まだ足りない」「もっと増やさなきゃ」)、終わりのない治療に依存してしまう。
精神科医監修による、薄毛の悩みとメンタル悪化の負のスパイラルを示すフローチャート。薄毛への不安がストレスとなり、それが体の不調を引き起こし、さらに抜け毛が増えたように感じるという悪循環を図解している。

尾内医師のアドバイス

尾内 医師

薄毛への囚われが強すぎて『醜形恐怖症』のような状態にある場合、薬で髪が生えても満足できず、逆に副作用への恐怖でメンタルが悪化することがあります。
『髪さえ生えれば幸せになれる』と思い込んでいることが多いのですが、根本的な自己肯定感の低さが解決されていないと、別の悩み(例えば肌の衰えや体型など)にターゲットが移るだけです。
治療を始める前に、『今の自分を受け入れる』ためのカウンセリングや認知行動療法が必要なケースも、臨床現場では少なくありません。
心が健康であって初めて、治療の結果を前向きに受け止められるのです。

毎月の固定費に余裕がなく、借金を考えている人

「AGA治療は自己投資」という言葉がありますが、投資はあくまで「余剰資金」で行うものです。

毎月の生活費を切り詰めたり、食費を削ったり、ましてやカードローンや医療ローンを組んでまで行うべきものではありません。

前述の通り、AGA治療は継続が前提です。

「最初の1年だけ頑張ってローンを払い、生えたらやめる」という計画は、AGAの進行性という性質上、破綻します。

やめれば戻るからです。

経済的な余裕がない状態で治療を始めると、「お金を払っているのに効果が出ない」という焦りが強くなり、精神的なストレスが増幅します。

そのストレスがまた薄毛の原因になるという皮肉な結果を招きかねません。

もし現在の月収から、毎月5,000円〜10,000円を「捨てたつもり」で出し続ける余裕がないのであれば、今はまだ治療を始めるタイミングではないと言えます。

将来的に収入が安定してから始めても、遅すぎるということはありません(もちろん早期治療が有利ですが、生活破綻のリスクを冒してまで優先すべき緊急事態ではありません)。

そもそも薄毛が「進行性」ではない人(円形脱毛症など)

意外と多いのが、「自分はAGAだ」と思い込んでクリニックに行ったが、実は別の脱毛症だったというケースです。

AGA(男性型脱毛症)は、前頭部や頭頂部が徐々に薄くなっていく進行性の脱毛症ですが、他にも脱毛の原因は数多く存在します。

  • 円形脱毛症: 自己免疫疾患の一種。コインのように円形に抜ける。AGA治療薬は無効。
  • 脂漏性脱毛症: 頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎)による抜け毛。皮膚科的な治療が必要。
  • びまん性脱毛症: 栄養不足やストレス、甲状腺疾患などが原因で全体的に薄くなる。
  • 牽引性脱毛症: 髪を強く縛るなどの物理的な負担によるもの。

これらの脱毛症に対して、フィナステリドなどのAGA治療薬を使用しても効果はありません。

効果がないのに薬を飲み続け、副作用のリスクと費用だけを負担するのは、もっとも避けるべき「後悔」の形です。

もし抜け毛のパターンが典型的でない(急に抜けた、部分的に抜けた、全体的にスカスカになった等)場合は、AGA専門クリニックに行く前に、まずは一般の皮膚科を受診し、正確な診断を受けることを強くお勧めします。


それでもやるなら「失敗回避」のリスク管理術

ここまで読んで、「リスクや負担は理解した。それでもやはり、薄毛のコンプレックスを解消したい」と強く思った方へ。

その決意は尊重されるべきものです。

ここからは、あなたがAGA治療で「失敗」や「後悔」をしないために、具体的にどう立ち回るべきか、実践的なリスク管理術を伝授します。

武器を持たずに戦場に出るのではなく、盾と鎧を装備して挑みましょう。

【費用対策】ジェネリックとオンライン診療の賢い使い分け

AGA治療の費用を抑える最大のポイントは、「薬の選び方」と「入手ルート」にあります。

まず、薬の選び方ですが、先発医薬品(プロペシアやザガーロ)にこだわる必要は医学的に見てほとんどありません。

特許が切れた後に発売される「ジェネリック医薬品(後発薬)」を選べば、有効成分は同じでありながら、価格を大幅に抑えることができます。

  • プロペシア(先発): 月額 6,000円〜8,000円程度
  • フィナステリド錠(ジェネリック): 月額 3,000円〜5,000円程度

効果が同等である以上、継続コストを下げるためにジェネリックを選ぶのは賢い選択です。

次に、入手ルートです。

近年普及している「オンライン診療」に特化したクリニックを活用することで、診察料や通院の交通費を削減できます。

対面診療を行うクリニックは、立地の良いビルにテナントを借り、多くのスタッフを雇う必要があるため、その固定費が薬代に上乗せされている構造があります。

一方、オンライン特化型は設備投資が少ないため、薬代を安く提供できるのです。

ただし、ここで一つ、絶対に手を出してはいけない「安さの罠」があります。

それが「個人輸入代行サイト(オオサカ堂など)」の利用です。

海外から薬を直接輸入すれば、月額1,000円以下になることもありますが、ここには致命的なリスクが潜んでいます。

  • 偽造薬のリスク: 成分が入っていない、あるいは不純物が混入している可能性があります。
  • 健康被害救済制度の対象外: 万が一、重篤な副作用が出た場合、国内で正規に処方された薬であれば「医薬品副作用被害救済制度」により医療費や年金が給付されますが、個人輸入の場合はすべて自己責任となり、一切の補償が受けられません。
大手通院型、オンライン特化型、個人輸入代行の3つのAGA治療クリニック形態を、コスト、安全性、手間の3点で比較した表。オンライン特化型がコストと安全性のバランスに優れていることを強調している。

結論として、「オンライン診療で国内正規品のジェネリックを処方してもらう」のが、安全性とコストパフォーマンスのバランスが最も優れた最適解です。

【副作用対策】減薬の相談と定期的な血液検査

副作用のリスクを最小限に抑えるためには、「何かあったらすぐに相談できるかかりつけ医」を持つことが重要です。

もし治療中に「性欲が落ちた気がする」「倦怠感がある」といった違和感を覚えたら、すぐに医師に相談してください。

医師の判断により、以下のような対策が可能です。

  • 減薬: 毎日飲んでいたのを2日に1回にする、あるいは成分量を減らす(1mgから0.2mgへ)。
  • 変薬: フィナステリドからデュタステリドへ、あるいはその逆へ変更する。
  • 休薬: 一旦薬を止めて様子を見る。

また、内服薬である以上、肝臓への負担もチェックする必要があります。

AGA治療薬は肝臓で代謝されるため、稀に肝機能障害を起こすことがあります。

健康診断の結果などで、肝機能の数値(AST, ALT, γ-GTPなど)に異常が見られないか、定期的に確認しましょう。

安全管理の観点からは、処方前に直近の血液検査結果の確認や、必要に応じた採血を行うことが望ましいです。

また、血液検査の案内や確認が一度もないまま漫然と処方が続く場合は、説明体制や安全管理の姿勢を慎重に見極めましょう。

自分の身を守るためにも、血液データに関心を持ちましょう。

【メンタル対策】「生えなくても自分」を受け入れる準備

最後に、最も重要なメンタル面でのリスク管理です。

それは、「治療はあくまでQOL(生活の質)を上げるための手段であり、人生のすべてではない」というマインドセットを持つことです。

「髪が生えなければ自分には価値がない」と思い詰めてしまうと、治療の効果が出なかった時、あるいは副作用で治療を断念せざるを得なくなった時に、心が折れてしまいます。

これを防ぐためには、「もしダメだったら、その時はスキンヘッドにして、ファッションや筋トレでかっこいいハゲを目指そう」といった、撤退ライン(プランB)をあらかじめ想定しておくことが有効です。

「絶対に失敗できない」という背水の陣ではなく、「うまくいけば儲けもの」くらいの心の余裕を持つことが、結果としてストレスを減らし、治療の継続を助けてくれます。

尾内医師のアドバイス

尾内 医師

治療を始める際は、『もし効果が出なくても、自分には他の魅力がある』という自己肯定感の土台を持っておくことが大切です。
治療に人生の全てを賭けてしまうと、精神的に追い詰められてしまいます。
髪はあなたの体の一部ですが、あなた自身ではありません。
治療を選択するあなたも、しない選択をするあなたも、等しく価値があることを忘れないでください。


後悔しないクリニック選び「悪徳業者の見抜き方」

AGA治療業界には、残念ながら患者の足元を見て利益を優先する「商業主義的」なクリニックも存在します。

あなたがカモにされず、誠実な医療を受けるために、クリニック選びで絶対にチェックすべきポイント、そして悪徳業者の手口を公開します。

以下の特徴に当てはまるクリニックは、避けたほうが賢明です。

カウンセリングで「即日契約」を迫る所はNG

最も警戒すべきなのが、「今日契約すれば半額になります」「モニター価格は今日までです」といって、その場での契約を強引に迫ってくるクリニックです。

これは、患者に冷静に考える時間を与えず、不安な心理につけ込んで高額な契約を結ばせる常套手段です。

AGA治療は緊急を要する手術ではありません。今日始めても明日始めても、結果は変わりません。

まともな医療機関であれば、「一度持ち帰って検討してください」と言うはずです。

「今決めないと損をする」と思わせる手法は、医療ではなくセールスのテクニックです。

もしカウンセリング室に長時間軟禁されたり、強い圧力を感じたりした場合は、「一度家族に相談します」と言って毅然と立ち去りましょう。

特定商取引法に基づくクーリングオフ制度についても、事前に確認しておくことが重要です(ただし、医療行為自体はクーリングオフの対象外となるケースも多いため、契約前の慎重さが求められます)。

不要なオプション(サプリ・高額注入)をセットにする手口

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」において、推奨度A(行うよう強く勧める)とされているのは、以下の3つだけです。

  • フィナステリド内服
  • デュタステリド内服
  • ミノキシジル外用(塗り薬)

これら以外の治療法、例えば「成長因子の頭皮注入(メソセラピー)」「オリジナルサプリメント」「高出力レーザー」などは、推奨度がB(行うよう勧める)以下、あるいはC1(行ってもよい)程度に留まっています。

にもかかわらず、悪質なクリニックでは「薬だけでは生えません」「注入治療とセットにしないと効果が出ません」と言って、医学的根拠の薄い高額なオプションメニューを必須のように勧めてきます。

その結果、年間100万円を超える見積もりを提示されることもあります。

基本は「内服薬+外用薬」のみで十分な効果が期待できます。

「最初は安く見せて、カウンセリングで高額商品を上乗せする(アップセル)」手口には十分注意してください。

医師ではなく「カウンセラー」が治療方針を決める違和感

クリニックに行くと、医師の診察はほんの数分(あるいは数十秒)で終わり、あとは白衣を着ていない「カウンセラー」や「コンシェルジュ」と呼ばれるスタッフが長時間説明をしてくる場合があります。

そして、どのプランにするか、どの薬を使うかといった治療方針まで、そのカウンセラーが決めてしまうことがあります。

これは非常に危険な兆候です。

本来、診断と処方は医師の独占業務です。

医学知識のないカウンセラーは、あくまで営業担当であり、彼らの目的は「あなたの髪を治すこと」よりも「売上目標を達成すること」にあるかもしれません。

尾内医師のコメント

尾内 医師

信頼できる医師は、メリットだけでなくデメリット(副作用やリスク)についても時間をかけて説明します。
良いことばかり言う、あるいは『将来ハゲて彼女もできませんよ』などと不安を煽って高額な契約を迫るような対応には注意が必要です。
医師があなたの目を見て、真摯に向き合ってくれているか。それを判断基準にしてください。


よくある質問(FAQ)

最後に、AGA治療に関してよく寄せられる疑問について、一問一答形式で簡潔にお答えします。

AGA治療をやめると、髪は一気に抜けますか?

一気に全部抜けるわけではありませんが、徐々に治療前の状態に戻ります。

治療をやめると、抑えられていた男性ホルモンの影響が再び現れ始めます。

魔法が解けたかのように、翌日ツルツルになるわけではありませんが、数ヶ月かけてヘアサイクルが再び短くなり、AGAの進行が再開します。

これをリバウンドと呼びます。

維持したければ続ける、やめれば戻る。非常にシンプルですが残酷なルールです。

ミノキシジルタブレット(内服)は危険ですか?

効果は強力ですが、副作用リスクも高いため慎重な判断が必要です。

通称「ミノタブ」と呼ばれるミノキシジルの内服薬は、発毛効果が非常に高い反面、全身の多毛、動悸、息切れ、むくみ、心膜液貯留といった循環器系への副作用リスクがあります。

実は、日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨度D(行うべきではない)とされています。

これは「効果がない」からではなく、「副作用のリスクが利益を上回る可能性がある」ためです。

多くのクリニックで処方されていますが、あくまで医師の裁量と患者の同意に基づく「適応外処方」であることを理解しておく必要があります。

血液検査なしで薬を処方されるのは普通ですか?

いいえ、リスク管理の観点からは普通ではありません。

肝機能障害などのリスクを踏まえると、血液検査で肝機能(AST/ALT/γ-GTPなど)を定期的に確認することが望ましいです。

初診時だけでなく、定期的に(半年に1回など)検査を行ってくれる、あるいは職場の健康診断結果を確認してくれるクリニックを選びましょう。

「薬を渡して終わり」というクリニックは、安くても避けるべきです。


まとめ:迷いがあるうちは「始めない」のも正解

AGA治療は、現代医学において薄毛を改善できる最も確実な手段の一つです。

しかし、それは魔法の杖ではなく、リスクとコスト、そして継続という努力を伴う現実的な医療行為です。

以下の項目すべてにチェックが入るなら、あなたは後悔せずに治療を始められる準備ができています。

▼ AGA治療 最終判断チェックシート
  • [ ] 毎月5,000円〜15,000円を、少なくとも数年間は払い続ける経済的余裕がある
  • [ ] 1〜2ヶ月目の「初期脱毛」で一時的に抜け毛が増えることを理解し、耐える覚悟がある
  • [ ] 性欲減退などの副作用リスク(数%)を許容できる
  • [ ] パートナーと相談済みで、近々の子作りの予定がない(または休薬する計画がある)
  • [ ] 「生えなくても自分の価値は変わらない」という最低限の自己肯定感を持っている
  • [ ] 即効性は求めず、半年〜1年はじっくり待てる

もし、これらに「YES」と言い切れない項目があるなら、無理に今すぐ始める必要はありません。

迷ったまま始めても、初期脱毛や費用の支払いで心が折れ、後悔することになるでしょう。

まずは「自分の現状」を客観的に知るために、セールスのない一般の皮膚科や、信頼できる医師に「相談だけ」しに行ってみるのも一つの手です。

治療をするもしないも、あなたの自由です。

尾内医師の総括

尾内 医師

『ハゲたら終わり』ではありません。
治療をするもしないも、あなたがより良く生きるための選択です。
不安な気持ちに蓋をせず、納得いくまで検討してくださいね。
自分の心と体に正直に向き合って出した結論なら、どちらを選んでもそれがあなたの正解です。

あなたの人生が、髪の有無にかかわらず、豊かで前向きなものであることを願っています。

参考文献

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